最近よく耳にする「DX化」とは、一体どんな意味なのでしょうか。
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、直訳すればデジタルによる「変容」という意味となります。
変容というと少しわかりにくいかもしれませんが、デジタルを使って生活やビジネスを変えていくという意味で理解しください。
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DX化とは

このDXに関しては、正確にどこかで定義されている言葉ではありません。
スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が2004年に「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しているため、この考え方がDXの基本コンセプトとして捉えられていることが多いようです。
具体的にいえば、例えば書類のペーパーレス化や、情報のデータベース化などがそのわかりやすい例です。
さらにDXをビジネスの領域に限定して考えると、マイケル・ウェイド氏らによって提唱された「デジタルビジネストランスフォーメーション」というものもあります。
このデジタルビジネストランスフォーメーションでは「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義されています。
IT化との違いと関係性

さてこのDXという考えですが、少し前によく使われていた「IT化」とは意味が異なるのでしょうか?
同じようにデジタルを使って改革を行うという意味で使われていることが多いため、この二つの言葉は同じような意味として見られがちですが、実は根本が異なっています。
ではいったい何がどう違うのでしょう?
IT化の意味
IT化というのはInformation Technologyの略で、コンピュータやネットワークなどのテクノロジーを利用することを意味します。
これまで紙で記録していたデータや情報を、パソコンを使い管理するといった、アナログからデジタルへのリプレイスの手段として、IT化は推進されてきました。
IT化は手段、DX化は目的
一方のDX化は、デジタルを使って業務などを効率化していくという意味です。
つまりIT化というのは業務をデジタルという「手段」を使ってリプレイスしていくという手段であるのに対し、DX化は業務効率の改善やビジネスモデルの改善を「目的」としてデジタルを利用していくという意味となります。
IT化の場合は既存の業務プロセスをデジタル化するのが基本となるのに対し、DX化はデジタル化によって従来の業務プロセスを変革させていくというのが、両者の大きな違いと言えるでしょう。
なぜDX化が注目されているのか

ではなぜ今DX化が注目されているのでしょうか。
まずは「スマートフォン」の存在を見逃すわけにはいきません。
いつでも情報にアクセスできるスマートフォンを使えば、ビジネスの多くをスマートフォンを使って処理可能です。
さらにそのことによって、既存のビジネススタイルが崩壊しつつあるのも、いまDX化が注目されている要因となっているでしょう。
さらに後ほど説明しますが、「2025年の崖」という大きな出来事も無視できません。既存システムからの脱却こそ、競争力のある企業にとっては不可欠な状況となっているのです。
DX化によって得られるメリット

しかしいくらDX化という旗を振られても、それが明確なメリットをもたらさなければ取り組む価値がないと感じるかもしれません。
では、DX化はビジネスに対してどんなメリットを提供してくれるのでしょうか。
働き方改革と業務効率化
業務プロセスやビジネスモデルをデジタル化することで、新しいビジネスの創造が期待できます。なぜならDX化に伴い、既存の業務プロセスを見直す機会が提供されるからです。
業務プロセスを改善すれば、当然ですが収益も向上します。
さらにDX化による情報の共有化などにより、セールスパワーも向上します。
そのほかに、働き方改革という意味でもDX化はビジネスに貢献します。
最近ではもう避けることができない在宅ワークやネットを使ったミーティングなどもDX化の一環としてさらに必要性が増してきます。
人材を募集する際にも、従来の形からよりデジタルを活用したものにすることでより優秀な人材を得られるようになります。
「2025年の崖」の解消
DX化が推進されている理由の一つに、2025年の崖というう問題があります。
2025年の崖とは老朽化した既存のコンピュータシステムが残存した場合、国際競争に取り残されてしまうという問題です。
これは特に日本における旧型のシステムが引き起こす問題として取り上げられているもので、経産省のDXレポートの中でも問題が指摘されています。
このような旧型、あるいは既に開発者がリタイアしてしまってブラックボックス化してしまったシステムを捨て、新しいDX化によってシステムをアップデートするという意味でも2025年の崖は注目するべき課題と言えるでしょう。
企業がDX化を推進する際の導入手順

では実際に自社がDX化を進めていく場合、どのような導入手順を踏めば良いのでしょうか。
具体的にそのステップを見ていきましょう。
ステップ1:デジタル化
DX化をスタートするために何がまず必要かと言えば、それは当然様々なデジタル化です。
例えばペーパーレスのためのデジタル化など、従来アナログで実施していた業務を可能な限りすべてデジタル化することが第一歩となります。
さらにこれ以前に、DX化によってどのような改善を実現したいかという目標を明確化しておく必要があります。
ステップ2:効率化
しかしデジタル化すればすべての業務が効率良くなるかと言えばそうとも限りません。
慣れの問題もあり、さらにデジタルに慣れていない人にとってはかえって効率が悪くなる可能性もあります。
さらに業務プロセスもデジタル化に伴い変更しないと、効率化が見込めない場合もありますので、次のステップとしてはデジタル化によって業務を効率化するための、スタッフの教育や業務プロセスの見直しが必要となります。
ステップ3:共通化
DX化は様々なビジネスの業務をデジタル化していきますから、そのデータを共有しなければ効率化は難しくなります。
アナログ作業の時代には部署ごとに異なっていたプロセスを統一し、あるいはデータベース化することで、情報を共有できる仕組みづくりなどの、共通化が重要となります。
ステップ4:組織化
DX化は組織全体で適用しなければ意味がありません。
例えば組織全体のワークフローをデジタル化することも大切と言えます。
あるいはDX化に関する専任のスタッフを組織に置くということも、スマートにDX化を推進するためには必要と言えるでしょう。
ステップ5:最適化
DX化を進める際には、すべてが予定通り進むというわけにはいかない場合もあります。
初めての取り組みとしてDX化を実施する際には、むしろ予定通り進まないことの方が多いかもしれません。
そのような時はPDCAサイクルなどのテクニックを利用して、常にDX化の最適化を実施しましょう。運用や使用しているシステムなどを見直し、業務プロセスも改善していくことで、DX化による最終的な効率化が実現できます。
DX化が目的ではないことを忘れずに
DX化は単なるトレンドではなく、これからのビジネスシーンでは絶対に外せないものです。
しかしかといってDX化をすることだけに集中して、本来の業務効率化という目的を忘れてはいけません。
しっかりとしたステップを事前に組み、業務を効率化し、新しいビジネスモデルを構築できるように、目的を明確化して取り組むことが必要です。