日本における自動車販売では、ハイブリッド車が人気です。
エコのイメージや時代の空気感だけでなく、実際にガソリン消費が少ない事から支持されています。
しかし、ハイブリッド車は同タイプのガソリン車よりも車体価格が高額になり、単純に差額をペイしようと思えば、年間走行距離が多くても数年掛かります。
つまり、年間の走行距離が少ない人はトータルコストが高くなるという事です。
一般的な家庭用プリンターは、数千円から4万円程度まで幅広く販売されています。
ハイブリッド車と同様の事が、プリンターにも当てはまるのか?
本体の安さを優先して買ったプリンターと、印刷コストの安さを優先して買った「プリンターの導入費用+維持費=トータルコスト」の比較をしてみます。
購入価格=イニシャルコスト=性能
金額の安いプリンターと高いプリンターを比較すると、違いは機能と性能です。
FAXなどの複合機としての機能が必要なら、費用は高くなっても別途購入するよりも合理的です。
一概には言えませんが、高い機種ほど印刷クオリティも高い傾向にあります。印刷スピードも同様の傾向です。
最近のインクジェットプリンターのトレンドは、大容量インクタイプがあげられます。競う様に各社から発表されています。
従来のインクカートリッジとは異なり、プリンターの中に内蔵されたタンクにインクを入れて、無くなれば継ぎ足す事が出来るものです。
Canonはギガボトル・EPSONはエコタンク等、「インク交換の手間が減る」事と「低ランニングコスト」を各社ともポイントとして謳っています。
しかし、その分本体価格は従来の売れ筋価格よりも高額になっています。
実売価格としては、3万円から4万円程度が中心価格です。
それに対して、従来型タイプのインクジェットプリンターは7,000円程度から15,000程度で、プリンター全体の中で売れ筋の上位を占めています。
「安いタイプの印刷クオリティが使い物にならないか?」と問われれば、決してそうではありません。通常の印刷には何ら問題無く使えるからこそ、売れ筋になっています。
ならば、「プリンター選びは、導入費用イニシャルコストが安い方が良い!」と考えるのは、些か早計です。
トータルで考えた時に、プリンターを稼働させれば消耗品等の維持費が掛かるからです。
印刷コスト=ランニングコスト=インク&紙&消耗品代
インクジェットプリンターは、購入後の消耗品(ランニングコスト)が意外に高くつきます。
ランニングコストには、紙や電気代も掛かりますが、最も高いのはインクです。
トータルコストで考えれば、ランニングコストは決して無視は出来ません。
印刷枚数がそれほど多くないなら、「イニシャルコストが安い方」が、ランニングコスト(主にインク代)が高額になっても、トータルコストでは安くなる可能性が高く、印刷枚数が多ければ「イニシャルコストが高い方」でもランニングコストが安くなるなら、トータルコストでは安くなる可能性があります。
一年間使った場合のシミュレーション
インクコストの削減には、純正ではない互換タイプを使用することも有効です。
ただ、一概に比較することが困難であるため、今回はメーカー発表の数値を元に比較します。
実際に計算してみましょう。
印刷コストの低減でユーザー満足度の高い「canon G3360」は、大容量のギガタンクを搭載する売れ筋機種で、実売本体価格は「30,000円程度」です。
メーカーが公表している社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)制定「家庭用インクジェットプリンターの印刷コスト表示に関するガイドライン」に則った、A4普通紙カラー文書のインクコストは「0.9円」です。
現在売れ筋No.1の「canon TS3330」は標準的なエントリーモデルで、実売本体価格は「8,000円程度」です。
同様のインクコストは「22.2円」です。
月10枚(年間120枚)
一般的な家庭の使用では、年間120枚程度で収まる事も多いと考えられます。
「G3360」本体価格30,000円+120枚×0.9円=30,108円(年間トータルコスト)
「TS3330」本体価格8,000円+120枚×22.2円=10,664円(年間トータルコスト)
イニシャルコストが安いタイプの圧勝です。何故売れ筋になるのか理解出来ますね。
月100枚(年間1,200枚)
では、それなりに使う場合をシミュレーションしてみます。
「G3360」本体価格30,000円+1,200枚×0.9円=31,080円(年間トータルコスト)
「TS3330」本体価格8,000円+1,200枚×22.2円=34,640円(年間トータルコスト)
逆転しました。この枚数になると、イニシャルコストが高くても、ランニングコストが安い方がトータルでは安くなります。これ以上の枚数では、差が広がるばかりになります。
月3,000枚(年間36,000枚)
仕事でバリバリ使う枚数でも計算してみます。
「G3360」本体価格30,000円+36,000枚×0.9円=62,400円(年間トータルコスト)
「TS3330」本体価格8,000円+36,000枚×22.2円=807,200円(年間トータルコスト)
思っていたよりも大きな差になりました。
安さを優先して購入したプリンターは、印刷枚数が少ない場合にメリットを享受出来ますが、印刷枚数が一定以上の場合は印刷コストを優先した場合が大きくなります。
年間トータルコストで考えれば、プリンターレンタルも比較してみましょう。
プリント革命の「BIJ-C8プラン」は、月に3,000枚までプリントし放題のライトプランで月額5,000円です。年間のトータルコストは60,000円になりますから、前述のシミュレーション数値よりも安くなります。算出した金額の基本はビジネス文書ですから、よりインク消耗の激しい写真等の出力が多い場合は、よりレンタルにメリットが出ます。
コンスタントに数量をプリントするなら、インク以外のメンテ・トラブルもコストとして発生する可能性があります。プリント革命は月額料金以外に掛からずに、それらをカバー出来る事を考えると、更に安いと言えますね。