3Dプリンターとはどんなプリンター?何がプリントできるの?

ものづくりの現場やクリエイティブの現場などで、革命と呼ばれているのが「3Dプリンター」です。

従来のプリンターは2次元の平面に印刷を行いますが、3Dプリンターは3次元の立体的な造形が行える画期的な機械です。

まだまだ高価だと思っていた3Dプリンターですが、購入しやすいタイプが登場していて身近になりつつあります。

この3Dプリンターとはどんなものなのか?
いったい、何に使われているのか?何がプリントできるのか?

多くの可能性を秘めている、3Dプリンターについて解説します。

目次

立体物を「プリント」するのが3Dプリンター

3Dプリンターで何が行われているのか?具体的に見ていきましょう。

デザイン確認

平面のデザイン画では、どれだけ繊細に描かれていてもイメージが伝わらないケースが存在しています。

二次元のデザイン書では難しい、手に持ったときの湾曲したデザインを、3Dプリンターは具現化することができて、リアルなサイズ感も伝わります。

新商品の開発プレゼンなどで、3Dプリンターを用いる事で社外社内を問わず訴求力が上がります。

建設業では立体的な完成形を3Dプリンターなら提示が可能で、施工主へのプレゼン時や、内部構造をリアルに把握できる事により工法の再検討にも役立ちます。

金型不要で試作が可能

ものづくりの現場では、設計や開発段階において試作品による試行錯誤が欠かせません。

新しいパーツを試作して構造のチェックや動作確認を行う為には、新たな金型を作成する必要が従来なら有り、費用面やかかる時間が嵩みますが、3Dプリンターなら金型不要で短時間に低コストで作成が可能になります。

完成までの開発時間が大幅に短縮出来るだけでなく、試行錯誤の変更が直ぐに反映されるため、ものづくりの質が大幅に向上できます。

治具に活用して生産効率アップ

治具と書いて「じぐ」と呼びます。

製造業に従事している方にとっては当たり前でも、そうで無い方は聞く機会は殆どありません。

治具とは生産工程において、加工の案内をして適正に手助けをしてくれるパーツのことです。

治具の善し悪しで生産効率は変わり、品質も安定します。

治具は加工内容に応じてワンオフで作成されるもので、量産はされていません。

工程の変化や新製品の製造などの新しい治具が必要になれば、その都度専門メーカーに依頼するか、社内の技術者が取り組みますが、3Dプラインターで治具を作成することにより、対応が早くなりコストも削減されます。

TQC(トータルクオリティコントロール)で出てきた業務改善や効率改善にも、3Dプリンターを用いれば、いち早く対応した治具を利用できるようになります。

小ロット生産対応

顧客のニーズに合わせた一品ものや少量の製造依頼には、膨大な時間と費用が掛かりますが、3Dプリンターで最終製品として納品すれば、短時間低コストで可能になります。

既に製造中止しているパーツなども、3Dプリンターでワンオフの制作が可能で、修復不可能と思われていた機械が蘇ります。

3Dプリンターの種類は?

3Dプリンターは、STLデータと呼ばれる3DのCAD設計データを用いて、データから直接スライスされた2次元層を積み重ねていく事によって、立体的な造形を行う事が基本です。

3Dプリンターには色々な方式があり、向き不向きがあります。
具体的に見ていきましょう。

Fused Deposition Modeling (FDM) プリンター

FDMは、現在最も一般的な3Dプリント技術ということができます。

FDMはプリンターヘッドが材料となるプラスチックフィラメントを加熱し、層状に積み重ねて立体物を作り上げます。

その意味では一番従来のプリンターに近い概念の3Dプリンターとも言えるでしょう。

使える素材としては試作品としてよく利用されている熱可塑性樹脂となり、プロトタイプの製作に向いています。

FDMプリンターは、比較的安価で様々な素材が利用できるため、人気の高い方式となっています。

光硬化樹脂や粉末材料を使用しなくても良いため安全性に優れていて、他のモデルと比較してコスパも優れている事から、最初の3Dプリンターとしてもオススメです。

Stereolithography (SLA) プリンター

SLAは別名「光造形方式」とも呼ばれる3Dプリンターの種類で、レーザーを使って「光硬化性」の樹脂を層状に積み重ねて、立体物を作り上げるます。

SLAには2つの種類があり、1つは「レーザー方式」、もう一つが「DLP方式」と呼ばれる一括面露光するものです。

レーザー方式はSLAの中でも主流となっている仕組みで、光硬化樹脂のプールにレーザーを当て、1層ずつ積み重ねて形を作ります。

DLP方式はプロジェクターのように像を造って、同じく光硬化樹脂を一層ずつ固めていきます。

SLAプリンターは、高精度で詳細な形状を作成することができ、仕上がり速度が他のものと比較して速いのが特徴です。

個人用のものは比較的安価なモデルも登場していますが、産業用のモデルはまだ高額なものが多くなっています。

後の加工がし易く、大型サイズも対応が可能なので、舞台や映画の小道具などで利用される他、自動車の開発段階で作成される実寸サイズの試作などで利用されています。

Binder Jetting (BJ) プリンター(バインダージェット)

BJ方式は、液体のバインダー、つまり結合材を使用して、粉末状の材料を接着し、層状に積み重ねて立体物を作り上げる3Dプリンターです。

BJプリンターは、サポート剤が不要となり、着色がしやすく、高速で大量生産に向いています。

ただし表面精度がやや粗く、強度が弱いのが弱点となりますので、あくまで形状の確認で強度が必要のない用途に向いています。

Direct Energy Deposition (DED) プリンター(指向性エネルギー堆積法)

DEDは、レーザーやプラズマアークを使用して、金属粉末材料を加熱して層状に積み重ねて立体物を作り上げる3Dプリンターです。

DEDプリンターは、異種材料を組み合わせて造形でき、非常に大きな立体物や金属製品を作成することができます。

高熱で融解するので、耐久性のあるものを作ることが可能です。

Selective Laser Sintering (SLS) プリンター(粉末焼結積層造形方式)

SLSは、レーザーを使用して粉末状の材料を溶かし、数分の1ミリ単位で裁量を層状に積み重ねて立体物を作り上げる3Dプリンターです。SLSプリンターは、様々な材料を使用することができ、比較的高精度で、機械的強度の高い立体物を少量生産や大型部品、アイソメトリックパーツが作成できます。

3Dプリンターが活躍するジャンルは?

3Dプリンターの概念は意外と古く、1970年代には特許が取得されていますが、実用には程遠いものでした。

1980年代に入り実用化が進みましたが、非常に高価であり制御も複雑な困難さが伴い、広く普及するのには至りません。

そこから30年が経過した2010年頃になると、安価な個人向けプリンターの登場とパソコンの高性能化が伴って本格的な普及が始まります。

2020年になると、安価な3Dプリンターでは1万円前後から購入できるようになっています。

今後も含めて、3Dプリンターが活躍するジャンルを考察してみましょう。

試作の現場

パソコンの3D画面では伝わらない、立体的な造形が3Dプリンターならリアルに可能になるため、試作が必要な現場では必要不可欠なツールに既になりつつあります。

工業製品製造の現場だけでなく、幅広く利用されています。

自動車などの工業製品

古いものを長期間大切に利用する機運は世界的に広がりを見せていて(日本では政策上真逆の事が行われていて普及していませんが)、既に製造されていないパーツは以前なら自作するしかありませんでしたが、3Dプリンターを利用して金型不要でパーツの供給が可能になります。

逆に新しい製品の開発にも、リアルなモックアップなど、3Dプリンターが利用できる事は言うまでもありません。

医療分野

医療品で身につけるものは、フィットする形状に個人差があるため汎用性に乏しく、多大なコストが掛かっていましたが、3Dプリンターで解決できる事が多くなっています。

たとえば、補聴器は千差万別の耳の形状にフィットするものが、3Dプリンターで作成する事により安価に提供が可能になりました。

身体の失われた部位の修復にも、3Dプリンターを利用する研究が進んでいます。

教育現場

中学から高校、大学などの教育分野でも、3Dプリンターの活躍範囲は広がっています。

素系や立体の概念を理解するために使われたり、図面から立体を作り上げたりするような、知的好奇心を増幅させるために3Dプリンターが利用されています。

個人利用

3Dプリンターの低価格で高性能化が進めば、現在の2次元プリンター(普通のプリンターの事です)と同様に利用される可能性が有ります。

ホビーやDIYの用途で、「あったらいいな」が手軽に実現できるツールに、3Dプリンターはなっていくと考えられます。

 

この記事を書いた人

OLとして7年間中小企業に勤務したのち、Webライターとして独立。現在はプリンター関係の記事を中心に多数の媒体へ寄稿中。

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