大手プリンターメーカーのセイコーエプソン株式会社は、2022年11月17日に行われた、A3対応のオフィス用ビジネスインクジェット複合機「WorkForce Enterprise<LM>シリーズ」の発表を行う場で、2026年までにオフィス向けレーザー方式の大型複合機から撤退して、すべてインクジェット方式だけにする事を発表しました。
一昔前なら、家庭用にはインクジェットプリンター・オフィス用にはレーザープリンターで、綺麗に棲み分けがされていた事を考えれば、大きな転換だと言えます。
現在主力のオフィス用大型複合機コピー機は大半がレーザー方式であり、富士フィルムやシャープ・キャノンなどの、強力な競合メーカーの後塵を拝しているエプソンが、経営資源を集中させて、自社の得意ジャンルのインクジェット方式のプリンターに特化する決断の背景には、従来のインクジェットプリンターのオフィス利用の弱点を克服した、「ビジネスインクジェットプリンター」の存在抜きには語れません。
ビジネスインクジェットプリンターとは何か?従来のインクジェットプリンターとの違いやレーザー方式のプリンターとの違いも含めて解説していきます。
ビジネスインクジェットプリンターとは?
従来の家庭用のインクジェットプリンターは、ビジネス文書を印刷には不向きで、ボンヤリした文字で読みにくく、印刷後にはインクが乾く時間が必要で、複数枚を印刷した場合には裏面に色移りする事も避けられません。
印刷速度もレーザープリンターと比較すれば圧倒的に遅く、オフィスに用いられる事は基本的にありませんでした。
これらのデメリットを克服したのが、「ビジネスインクジェットプリンター」です。
その違いを見てみましょう、
従来の家庭用インクジェットプリンターとビジネスインクジェットプリンターの違い
〇インクの違い
最も異なるのは、使用するインクの違いです。
家庭用プリンターは「染料インク」・ビジネスインクジェットプリンターには「顔料インク」が使われています。
染料インクが用紙に浸透して混じり合い、繊細な階調表現が出来る為、写真印刷に向いています。
しかし、滲みやすい事が文字の表現にはマイナス材料で、ボヤッとした読みにくい文字になるため、ビジネス文章には向きません。
また、水に弱く長期的な保存に向いていない事も、ビジネス文書には適しません。
これに対して顔料インクは、文字を用紙に染みこませずに乗せるので、滲みが少なく読みやすい文字を印刷で表現する事が可能になっています。
乾燥するための時間を要せず、水にも比較的強く長期保存にも向いています。
〇印刷速度の違い
家庭用プリンターもビジネスインクジェットプリンターも、どちらもインクを用紙に吹き付けて印刷する事には変わりなく、印刷速度が大きく違うのは解像度による違いが大きな要因です。
繊細な階調表現が必要な写真プリントでは、解像度が高い必要が有り、インクを吹き出すプリントヘッドはゆっくりと動く必要が有る事から、印刷速度は遅くなっています。
ビジネスインクジェットプリンターは、繊細な階調表現が必要無いビジネス文書に特化している事から、解像度は低くなっている傾向にあり、そのため印刷速度は速くなっています。
ビジネスインクジェットプリンターとレーザープリンターの違い
レーザープリンターを目標に開発されたと言っても良い「ビジネスインクジェットプリンター」の、本家「レーザープリンター」との違いを見てみましょう。
〇筐体サイズ
レーザープリンターは、内部で印刷時に熱処理が必要になる事と、大きなサイズのトナーカートリッジを色数分だけ格納する必要が有る事から、筐体サイズは大きくなります。
ビジネスインクジェットプリンターは、印刷時に熱処理が必要無く、インクカートリッジも小型になることから、筐体サイズはレーザープリンターと比較して小さくなっています。
A3サイズのトレイを含めて、複数の用紙トレイを持つ大型複合機コピー機タイプでは、トレイ自体が大きなスペースを取ることから、それほど大きな差は生じません。
〇消費電力
前述のエプソンが、オフィスのレーザー方式から撤退して、インクジェットプリンター方式に専念する大きな理由のひとつが、消費電力の差です。
環境問題が叫ばれる昨今では、この消費電力の低さが武器になると考えてのことです。
2014年頃までのエプソン社内では、レーザー方式が主に使われていて、その時の月間消費電力は1万6,000kWに達していましたが、インクジェット方式に社内プリンターを置き換えていった2019年は、3,000kW弱程度までに削減が出来たそうです。
〇印刷速度と耐久枚数
現時点では概ね印刷速度と耐久枚数の優位性は、レーザー方式のプリンターにあります。
ビジネスインクジェットプリンターの印刷速度と耐久枚数も、ここに来て日々向上しているので、将来的には昔話になる可能性もあります。
ビジネスインクジェットプリンターのメリット・デメリット
ビジネスインクジェットプリンターのメリット・デメリットを以下に示します。
メリット デメリット
- 印刷スピードの速さと画質の良さを両立している
- 印刷コストが安い
- 消費電力が少ない ・給紙枚数が少ない
- 本体の寿命が短い
何よりのメリットは、印刷スピードの速さと画質の良さを両立している点です。これまでインクジェットプリンターは「画質は良いけど印刷スピードが遅い」が一般的なイメージでしたが、ビジネスインクジェットプリンターは印刷スピードの遅さが弱点となりません。
また印刷コストが安く、消費電力が少ない点も大きなメリット。トータルのランニングコストを削減できるため、オフィスにも導入しやすいですね。
同サイズのレーザープリンターと比較した際、給紙枚数の少なさはビジネスインクジェットプリンターの1つの弱点です。とは言え大きいサイズのレーザープリンターを導入すれば、給紙枚数は増やせます。
また本体寿命の短さもビジネスインクジェットプリンターのデメリットです。長期にわたって使い続けるのであれば、寿命の長いレーザープリンターの方が向いています。本体寿命の短さを心配するのであれば、購入ではなくレンタルでビジネスインクジェットプリンターを導入してもいいでしょう。
より詳細は、「ビジネスインクジェットプリンターとは|メリットとデメリットも説明します」も、併せてご覧下さい。
こんな人にビジネスインクジェットプリンターはおすすめ
現在の大型複合機コピー機と、同レベルのビジネスインクジェットプリンターは発展途上にあり、今後への期待はありますが、現状でオススメするのは中型複合機以下のタイプです。
オフィスのサブプリンター
レーザープリンターに比較すれば、ずっと小型の筐体で収まるため、オフィスでの2台目の用途にピッタリです。
棚の上などの身近なスペースに設置することが出来て、高性能な中型複合機を導入すれば、メインプリンターの役割を分散させる事も可能になり、業務効率も上がります。
「プリント革命」のレンタルプリンターサービスなら、初期費用無料で容易に導入出来ます。
たとえば、「BIJ-C20ライトプラン」では、月に3,000枚までの印刷がカラー・モノクロを問わずに自由に行えて、モノクロでは毎分24枚の大型複合機コピー機に迫る印刷速度を持ち、500枚の用紙がセット出来る、コピー・FAX・スキャン機能を備えた複合機が、月額レンタル料16,500円です。
オフィスで印刷する多くがA4までのため、メインの大型複合機コピー機のリース契約満期とともに、中型複合機2台のレンタルプリンターサービスに切り換えるオフィスが増えています。カウンター料金も無い為、月々の印刷経費が大幅に削減出来ます。
SOHOや個人事業主のオフィス
オフィスの電源容量によっては、レーザープリンターの利用時にブレーカーが落ちる事があります。
電力消費が少なく、スペースも占有しないビジネスインクジェットプリンターは、SOHOや個人事業主の事務所に設置するプリンターとして最適です。
大型複合機コピー機をリース契約するよりも、印刷経費も「プリント革命」のレンタルプリンターサービスなら安くなります。
たとえば、A3まで対応出来るビジネスインクジェットプリンター「BIJ-E18ライトプラン」では、コピーやFAXなど複合機の機能が備えられていて、カラー・モノクロを問わず、3,000枚までの印刷に対応した月額レンタル料は13,200円です。