CADと書いて「キャド」と読みます。
CADは縁がある方と無い方で、知名度が大きく異なります。
CADはComputer Aided Designを略した呼び方で、直訳すればコンピュータを用いた設計という意味です。
以前の設計図は青紙に焼いたタイプが主流でしたが、現在では平面的な2Dだけでなく、立体的な3Dの設計図を用いて、単色ではなく見やすいカラー印刷がされます。
設計図は繊細な詳細な書き込みがあり、それらを俯瞰して一元的に把握するのに最適な手段として、一般的に利用されるA3用紙以上のサイズが必要になります。
通常利用しない用紙が利用出来るプリンターを、大判プリンターという呼び方をしています。
CADに特化したプリンターも少数はありますが、現在主流になっているCADプリンターは、大判プリンターとしてCADの設計図出力に利用されるだけでなく、見やすく人目を惹くサイズ感がある、大きなサイズの印刷物の出力などにも用いられます。
CADプリンター(大判プリンター)とは何か?その用途や通常のプリンターとの違いも含めて、丁寧に解説していきます。
CADプリンターとは
一般的に利用されているプリンターは、大型複合機コピー機でも最大A3サイズで、CADで作成した詳細な設計図を確認する必要が有る、A1等で印刷する場合には、外部の専門業者に印刷出力を依頼するのが一般的です。
設計の変更や問題が見つかった場合には、その都度に依頼をし直す必要が有り、手間や時間と共に経費が掛かります。
そこで大判印刷が可能なCADプリンターを、自社内に導入する事によって、業務効率の向上や経費削減に繋がります。
CADプリンターの印刷形式は?
CADプリンターは大きな用紙サイズを印刷するので、1ページを丸ごと印刷出来るレーザー方式にすると、プリンターのサイズは現実的ではない、巨大なサイズになる事が容易に想像できますし、通常のプリンターと比較すると使用頻度が低いので、筐体サイズが抑えられ、本体価格も抑えられるインクジェット方式が一般的です。
インクジェット方式のプリンターと、レーザー方式のプリンターの違い、詳細については「インクジェットプリンターはレーザープリンターよりも優れている?コストを考えたプリンター選びをプロ目線で徹底比較します」も、是非併せてご覧ください。
CADプリンターに使用するインクは?
インクジェット方式に利用されるインクとしては、染料インクと顔料インクがあります。
CADプリンターでは、繊細な文字を読みやすく、コントラストが効いた出力が必要であり、長期間劣化しない・現場で利用する事も考えて水気に耐える事も求められるため、多くのCADプリンターでは顔料インクが利用されています。
写真の繊細な表現が必要な現場用のCADプリンターとして、文字の黒を顔料にして、カラーには染料を使用するタイプもあります。
染料インクと顔料インクの違いや詳細については、「顔料インクと染料インクの違いとは?メリット・デメリットを詳しく解説」も、併せてご覧ください。
CADプリンターの用途
CADプリンターは、業務効率を向上させることに積極的な、設計事務所などに広く導入されています。
カラー大判プリンターとしての利用は、店舗などで幅広く利用されます。
設計事務所などでの利用
A3出力ではルーペなどを利用して、細部を確認する必要が有る図面も、A1サイズで印刷する事で、効率良く仕事が進められます。
A1A2で印刷する必要がある設計図のデータは、外注に頼む必要があった設計事務所でも、CADプリンターを導入することで、自社でスピーディに解決出来るだけでなく、外注からの輸送都合によって丸まって来ていた設計図が、利用しやすい丸まっていない用紙の状態で仕事が進められるようになります。
店舗などでの利用
店内を飾る、カラーポスターや店頭バナー・POPなどに幅広く利用されています。
外注印刷に頼む場合には生じるタイムラグが、自社印刷することでタイムリーな告知が可能になり、ノボリなどの長尺POPにも利用されています。
顔料インクを使っていることにより、色褪せに強く雨にも耐えうることから、屋外掲示にも利用されています。
CADプリンターを導入するにあたっての注意点
CADプリンター導入にあたって、注意点を考えてみましょう。
設置場所をよく考えること
CADプリンターは、通常のインクジェットプリンターと比較して、大きなサイズの用紙を取り扱うため、筐体サイズも大きくなります。
メーカーや印刷出来るサイズ、機能によってもサイズは異なりますが、概ね横幅は1m前後になっていて、奥行きも50cmから60cm程度はあるプリンターが大半です。
設計事務所などで、設計図の保管に使われるマップケースの棚に、置けるサイズかどうかが一つの目安になります。
スペースが限られている事務所への導入は、多くのCADプリンターはWi-Fiでネットワークに組み込んで印刷が可能になっており、スタンドが付いた移動が出来るタイプも合理的です。
使用頻度とコスパも事前に確認しておく
外注印刷を頼んでいたものが、内製に変われば業務効率は間違いなく向上します。
設計事務所でCADのデータを印刷する場合は、導入にメリットがあります。
しかし、年に数回しか頼むケースが無い場合には、費用対効果に疑問が生じるケースもあります。
たとえば、A1サイズの普通紙印刷を外注に依頼すれば、10枚単位で印刷しても、概ね1枚1,000円から1,200円程度は費用が掛かります。
CADプリンターを導入して内製すれば、プリンターによっても異なりますが、用紙代やインク代のコストを合わせても、1枚100円以下で印刷が可能になります。
マット紙を使ったA1サイズの外注印刷は、同じく10枚単位で発注しても、1枚あたり2,000円程度ですが、内製なら300円程度です。
CADプリンターは安価なタイプでも、概ね12万円から15万円程度はしますので、外注との価格差が1,000円と仮定すれば、120枚から150枚は印刷しないと意味がありません。
プリンターの耐用年数は5年ですから、1年に30枚程度以上を印刷するなら、コスパでもメリットが出て、業務効率も大幅に向上します。
制作物のサイズに適しているか
通常のインクジェットプリンターの主流用紙サイズはA4ですが、CADプリンターのサイズの主流はA1ノビが主流です。
多くのA1ノビ対応機種である、CADプリンターが販売されています。
通常のA1サイズは594×841mmですが、A1ノビサイズは620×900mmになっています。
POPなどでも、充分にインパクトが有るサイズですね。
扱いやすい本体と用紙サイズのバランスとして、A1ノビが主流になっています。
このサイズで多くのCADデータは、問題無く出力が出来ますが、それ以上のサイズが必要な場合、914×1292mmのA0ノビサイズが扱えるプリンターになります。
A0を扱えるCADプリンターの機種は非常に少なく、Epsonの一部機種に限られます。
CADプリンターのメリット
ではここから、CADプリンターならではのメリットをご紹介していきます。
大きな用紙で図面を印刷できる
原寸大がA2サイズの図面をA3サイズまでしか印刷できないプリンターで印刷しようとすると、図面を縮小して印刷しなければなりません。
複雑でない図面ならそれでも問題ないでしょうが、複雑な図面では見づらくなってしまいます。A3サイズを2枚使えば原寸大で印刷できますが、2枚の用紙をセロハンテープなどでくっつける手間がかかるでしょう。
その点、CADプリンターであれば縮小しなくてもA2サイズやA1サイズなど大きな用紙で印刷できます。
原寸大で印刷すれば図面が見づらいといった問題は起こらないでしょうし、2枚の用紙をくっつけて図面を見るという手間もかかりません。
図面が見やすく使いやすい
大判プリンターのうちCADの図面の印刷に特化したものを選べば、普通のプリンターより見やすい状態で図面が印刷できます。
図面は文字のみ、写真のみの印刷データより複雑なので、普通のプリンターでは文字が潰れて見にくい可能性があるのです。
小さな数字や図形がびっしりと書かれたような図面だと、文字一つ一つができる限りにじむことなくクリアに印刷されている必要があります。
大判プリンターの中でもCADの図面に適したものを選べば、どんな図面でも見やすく快適に印刷できるでしょう。
CADプリンターのデメリット
次に、CADプリンターのデメリットを見ていきます。
価格が高い
CADプリンターは高性能なものを選ぼうと思うと、高額になります。普通のプリンターを同じ費用感で購入しようとすると、予算を大幅にオーバーしてしまいます。
CADの図面に適した大判プリンターを購入するなら、ある程度の予算が必要になります。
プリンター本体のサイズが大きい
先程も説明したように、大きいサイズの用紙で印刷できるということは、プリンター本体のサイズも大きいということです。狭いオフィスでは、置き場所がないために導入したくてもできない場合もあります。
プリンターを置く場所はあっても、印刷された用紙が排出される場所が確保できない可能性もあるでしょう。
このようにCADプリンターは本体サイズが大きく、印刷時にも場所が必要なため、設置できる場所が限られてしまうのもデメリットの一つです。
まとめ
CADプリンターは大半プリンターの中でも、CADで作成した図面を印刷するのに適した機種のことを指します。
一般的にはCADプリンターという名称では売られていないため、大判プリンターと記載されたもので、CADの図面の印刷に特化したものを自分で選ぶ必要があると覚えておきましょう。
CADプリンターはA2以上の大きな用紙に印刷できる反面、本体サイズが大きく印刷時にも場所をとります。本体価格も高めに設定されているため、オフィスに置けるかどうか、予算内で購入できるかどうかを事前に確認しておいてください。
印刷物によっては一般的なプリンターでまかなえるケースもあるため、本当にCADプリンターが必要かどうかもよく検討してから導入することをおすすめします。