引っ越しや修理など、様々な理由で家庭用プリンターを輸送する事態に直面する機会があります。
プリンターは精密機器の一つなので、丁寧に扱い梱包にも気を抜かないのが原則ですが、家庭用プリンターのインクジェット方式のプリンターが、他の精密機器と大きく異なるのは、液体であるインクを利用するということです。
使用前の新品のインクジェットプリンターでは問題ありませんが、既に利用しているインクジェットプリンターを輸送する場合、問題になるのがインクカートリッジをプリンターに付けたままにしておくのか?取り外しておいた方が良いのか?です。
実はこの問題は、なかなか簡単なようで簡単ではありません。
輸送を行う業者とプリンターメーカーでは、自社のリスクを減らすための安全策として立場の違いから、真っ向から異なっている事もあります。
家庭用プリンターを発送する時に、インクは外すべきか?付けておいた方が正解なのか?について解説します。
付けておくべきか?外すべきか?
家庭用プリンターを輸送するときに、インクカートリッジを付けておくか?外すのか?意見が分かれるのは多分に立場の違いがあります。
運送会社の立場
輸送する運送会社の立場としては、運ぶ荷物にトラブルが発生する事無く、荷主から送り先に届ける事を重視します。
そのため荷物のリスクを極力減らす事が重要であり、運送会社によっては会社のルールや規定として、家庭用のプリンターを輸送するときには、インクカートリッジを外す事になっているケースもあります。
インクを付けたままの家庭用インクジェットプリンターは、配送中の取り扱いに問題が無くても、何かの拍子に傾いたことでインクが漏れたり、トラックの揺れによってインクが漏れたりするリスクが有り、トラブルに繋がる事は避けたいという考え方です。
プリンターメーカーの立場
プリンターの製造会社の立場としては、無益なトラブルによる故障は、ユーザーの不利益になり、メーカーへのシンパシーも低下する恐れがあることから、避けたい想いがあります。
メーカーによって対応は異なりますが、メーカーや機種によっては、家庭用のインクジェットプリンターの輸送時には、絶対にインクカートリッジを外さないで欲しい事を、明確にしているケースもあります。
この根底にあるのは、輸送時にはインクカートリッジを外さない前提で、設計がされている事です。
結論:基本的に家庭用プリンターの発送はインクはつけたままでOK!ただしメーカーの指定による
詳細については後述しますが、家庭用プリンターの輸送時には、インクカートリッジは付けたままで梱包するのが正解です。
多くのインクジェットプリンターは外さない設計がされている
使いかけのインクカートリッジは、プリンターから外すことで乾燥を招き、インクを出力する部分が固まるなどの不具合が発生して、再度取り付けての利用が出来なくなる恐れがあります。
純正インクカートリッジは高額で、まだ利用出来るのに諦めなければならないのは痛手ですが、それ以上に本体のトラブルに繋がる可能性が高くなります。
また、インクジェットプリンターを取り外せば、プリンター内のインクは無くなると考えるのは間違っています。
インクの吹き出し口のプリントヘッドにはインクが残っていますし、それ以外にも本体の細かい場所にインクは入り込んでいる状態になっています。
インクカートリッジが正常に取り付けられていれば、それらの場所には蓋が閉められた状態になるように設計されているプリンターでは、外さない事で乾燥から担保されていると言えます。
メーカーや機種によっては外すことを明記しているケースも
メーカーや機種によっては、輸送する時には、インクカートリッジを外す前提で設計されているケースもあります。
その場合は、インクカートリッジを外した後に、専用の保護部材をはめ込む様になっていて、これがインクカートリッジを外しても本体のキャップの役割を果たします。
ブラザーを例に挙げると、購入時に差し込まれていた、オレンジ色のパーツです。
プリンターの利用時には必要が無く、廃棄する方もいらっしゃるようですが、くれぐれも大切にとっておいてください。
インクカートリッジも、専用のキャップで乾燥が保護されます。
家庭用プリンターはなぜインクカートリッジをつけたままでいいのか
一見、家庭用プリンターのインクカートリッジをつけたまま配送したほうが、インク漏れにつながる気がしませんか?
インクは別で梱包し、ビニール袋でぐるぐると巻いたほうが、インク漏れの心配をすることなく発送できそうなものです。
ではなぜ家庭用プリンターのインクカートリッジをつけたままで良いのか、外すと起こりうるトラブルから理由を見ていきましょう。
1.インクを外すとプリントヘッドのインクが漏れ出す
家庭用プリンターはインクカートリッジの中だけでなく、カートリッジとプリントヘッドと言う、インクの吹き出し口にもインクが入っています。
インクカートリッジがついた状態であれば良いですが、外すとプリントヘッドに残ったインクが出てくる可能性があり、配送中のインク漏れにつながるので注意が必要です。
2.インクを外すと配送中に壊れやすい
インクカートリッジを外すと、プリンター内部には大きな空洞ができた状態になります。基本的にインクをとって配送することを想定されて作られていないので、空洞状態のままではプリンター本体の強度は下がってしまうのです。
たとえば、中身に本がぎっしり詰まった箱なら、外側から衝撃を与えても箱はやぶれません。しかし、空箱だとちょっとの衝撃で箱は潰れてしまうのですが、これと同じことがプリンターにも言えます。
3.上部からインクが乾いてしまう
インクカートリッジは長時間プリンター本体から外されることを想定して作られていません。そのため、外して配送すると、その間にカートリッジの上部からインクが乾いてしまいます。
液体インクはカートカートリッジと本体の細かい部分に入り込むことで、文字だけでなく写真も鮮やかに印刷できるのです。細かい部分に入ったインクはより乾きやすいため、届いたころには目詰まりを起こして修理が必要というケースもありえます。
インクカートリッジ自体に乾燥を防ぐ機能はないため、つけたままの配送が推奨されているのです。
4.正しい方法で電源を落とせば配送中にインクが漏れることはない
インクカートリッジをつけたままで良いのか悩むのは、配送中に傾けることでインクが漏れないか心配になるからでしょう。
でも安心してください。インクカートリッジをつけたまま配送するよう作られているので、正しい方法で電源を落とせば配送中にインクが漏れることはありません。
ただし、斜めの状態で長時間トラックに積み込んだり、かなりの振動がかかるとインクが漏れる可能性はあります。
そのため、家庭用プリンターをインクカートリッジつきで配送するときは、
- 下積み厳禁
- 傾け厳禁
- 精密機械
- 取扱注意
などの注意点をシールなどで明記しましょう。
家庭用プリンターとインクカートリッジはテープで固定しよう
家庭用プリンターはインクカートリッジつきで配送しても問題ないとは言え、そのままポンと箱に入れるだけではインクが漏れたり本体が壊れたりする危険性があります。
では、どのように梱包をして発送すれば良いのでしょうか?ここからは、家庭用プリンターを配送するときの注意点をご紹介します。
カートリッジや開閉部をテープで固定する
インクカートリッジや用紙トレイ、開閉部などは、振動で開いてしまう場合があるのでテープで固定しましょう。
使うテープは粘着力が高くてテープ跡が残りにくい「養生テープ」がおすすめです。養生テープはホームセンターや100円均一などで販売されています。
振動で少しでも動く可能性がある部分はしっかりと固定してください。万が一配送中にインクがとれたり開口部が開いたりすると、届いたころには故障しているかもしれません。
梱包材や箱はあれば付属のものを使う
インクカートリッジが外れるのを防ぐには、プリンター本体のサイズに合った、付属の箱や緩衝材を使うのがベストです。
付属のものなら配送することを考えて作られているので、テープで固定さえしておけば、よほどのことがない限りインクが漏れたり本体が破損したりはしないでしょう。
付属の梱包材がないときはできるだけ隙間を作らないよう梱包する
もしすでに捨ててしまって付属の梱包材がないのなら、できるだけ本体とダンボールの間に隙間ができないよう梱包してください。
本体よりひとまわり大きい段ボールを使い、隙間は新聞紙でできる限り埋めましょう。可能なら本体をクッションペーパーでひと巻きすると良いです。ダンボールはスーパーで無料でもらえるものを使っても構いません。クッションペーパーはホームセンターや100円均一などで購入できます。
自分で梱包するのは時間と手間がかかるので、配送時のときを考えて箱や付属の梱包材は保管しておきましょう。
インク漏れがゼロではないので家庭用プリンター本体を必ず袋に入れよう
カートリッジの中に液体が入っている以上、絶対にインクが漏れないとは言い切れません。ではどんな対策を行えば、インクが漏れ出すトラブルを防げるのでしょうか?
プリンター本体をビニール袋に入れる
万が一漏れてしまったときのために、プリンター本体は必ずビニール袋に入れてからダンボールで梱包しましょう。付属の梱包材を使わず自分で行う場合は、本体をビニール袋に入れてからクッションペーパーで包んでください。
ビニール袋に入れたあとは、養生テープなどで口を全て塞ぎます。隙間があるとそこからインクが漏れる可能性があるので注意してください。
ビニール袋はゴミ袋を代用してもOK
付属の梱包材の中にビニール袋がなかった、あるいは捨ててしまった場合は、市区町村指定のビニール袋で代用しても構いません。スーパーやコンビニ袋では本体全体を包めないので、大きめのゴミ袋を選びましょう。
一度使ったビニール袋をリサイクルするときは、穴が空いていないか必ず確認してください。
家庭用プリンターを発送する時のポイント詳細は、「家庭用プリンターを送るときの注意点は?梱包方法や破損させないコツをご紹介」をご覧下さい。
まとめ
家庭用プリンターを配送する際に迷いやすい、インクカートリッジを取り外すか問題ですが、正解の基本は「取り外さないで送る」です。
しかし、メーカーや機種によっては「取り外して送る」様になっている事があります。
説明書の「本製品を輸送するときは」の項目を、必ず確認した上で指示に従ってください。