過度なペーパーレス化は業務効率を悪化させる原因になる

ペーパーレス化は完全に実現出来れば、大きなメリットを生み出します。
業務効率を上げて、紙・印刷代を大幅に削減し環境にも優しい。

ペーパーレス化は詰まるところ、紙を減らすこと。
しかし、紙を減らす事で生み出されるものがあるのと同時に、デメリットをもたらす事も少なくありません。

ペーパーレス化とは具体的に何をすることで、紙を減らす事で起きる良い点だけでなく、弊害について考えてみます。

目次

コスト削減の時代、中でも印刷コストは大きな割合を占める

企業の究極の目的は、利益を生み出すことです。
利益を生み出すためには、売上を増加させる事が早道であり最適です。
売上増を達成するためには、市況状況や競合企業など外的な要因が多く関わります。
それに比べてコストの削減は、外的要因に左右されずに売上増と同様な、利益を生み出す効果があります。

コスト削減をすることで、業務効率が悪くなっては意味がありません。
業務効率を上げながら、経費削減を具体的に考えた時に出てくるのは、「ペーパーレス化」です。オフィスのプリント印刷コスト1枚1枚は小さいですが、年間で全社という計上をすると、決して無視できない大きな経費の割合を占めていることに気がつきます。

ペーパーレス化という言葉は随分前から聞いていますが、なかなか実際には進んでいません。やってはみたモノの・・・中途半端で終わってしまった死屍累々の話は、枚挙に暇がありません。ペーパーレス化をしたのに紙に戻したり、時期が経過して再度ペーパーレス化を目指したりする事態も散見しますが、これは非常に非効率的です。

ペーパーレス化が進まないのは、いったい何故でしょうか?
具体的に、ペーパーレス化するということを検証します。

ペーパーレス化で行うこと

ペーパーレス化は、国として推奨しています。
本来なら法人税法・会社法・商法・証券取引法等で、長年義務づけてきた文書・帳簿・請求書・領収書等について、従来の紙媒体だけではなく、電子化された文書ファイルで保存する事を認めています。

これを裏付ける法律として、2005年4月に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の二つの法律があり、通称「e-文書法」と呼ばれています。

ペーパーレス化には、大きく分けて3つの要素があります。
それぞれ、おこなっていくためには大きなハードルが存在しています。

新規作成文書の電子化

社内での文書はもちろん、社外からの文書も電子化します。
新規の社内文書については、最も導入しやすく手始めとして最適です。
文書書類を体系的に分類し、業務の流れを加味しながらストックします。

社外から届く文章に関しては、前もって種別と処理(電子化するのか?しないのか?)を分類しておき、即座に電子処理を行うのか、一定の期間でまとめて行うのかを決めておく必要があります。紙文書は検索可能なOCR情報にして電子化します。

紙を使って行っていたビジネス行為を電子化

こちらも社内と社外で対処する必要があります。

社内的にはミーティング・会議で使う紙の資料配布を中止にして、クラウドストレージ・ファイルサーバーに置いた電子化した資料を、各自参照するスタイルに変更します。次の段階として稟議の電子決済等の導入検討に入ります。

社外の場合は、相手のある事なので一筋縄にはいきません。メリットを説明し、ビジネスの大幅なスピードアップを目指す共闘者になる事が出来れば、お互いにとってプラスになります。

既存文書を電子化

これが一番の難題です。
文書の電子化が目指す効率アップを実現するためには、新規だけで無く既存の文章もデータ化する必要があります。膨大な資料を新規文章と同等の処理をする事は難しくても、検索可能なデータにして閲覧できる状態までは、最低限持っていく必要があります。

業務効率が悪化する可能性もある

ペーパーレス化が国を挙げて提唱され、メリットが有ることは確かですが、闇雲に紙を減らすだけでは、業務効率の悪化をむしろ招き、日常業務に支障が出ることもあります。

ルールに不備がある

明確なルールの存在無しに、ペーパーレス化は成功しません。
とかく紙を減らすという事だけに執着して、目標値に向けてひたすらペーパーレス化を進める手段の場合に、業務効率は著しく低下します。

一例として、電子化したファイルの保管方法の運用ルールが徹底していない場合、せっかく電子化して積み上げた資料を有効活用するのにあたり、何処にあるのか?さっぱり解らない事態を招き、ペーパーレス化が進むほど、業務効率は悪化の一途になります。

業務の進め方が変わる

ペーパーレス化することで、以前から行っている業務内容や手順には、大なり小なりの変更が必要になることは否めません。

紙で管理していた業務内容が電子化されることで、余分な手間が加わったり、ITスキルが不足していたりする場合は、大幅に同じ内容の仕事で作業時間が増加する事も有ります。

手順を標準化するなどしてマニュアル手順を用意して、不安な時に戻れる場所、参照できる資料を用意する必要が有ります。
しかし、実際の仕事内容で大幅に変わる事も有り、そのマニュアルの準備だけでも膨大な時間を要するため、全体の業務効率は低下します。

ペーパーレス化するのは、今までに無かった手順を覚える必要が出て、既に慣れているやり方に変更を強いる場合も有り、それを念頭に浸透させていくことが必要で、実際に行う現場から反発が出てこれば、業務効率は更に悪化する事も考えられます。

データ化出来ない・判断に迷う

推進する側が現実をよく把握していないと、現場は混乱して業務効率は悪化します。

重要なデータの中には、紙で保管する方が良いケースも有り、一律のペーパーレス化は、真面目な社員ほど判断に迷いが生じて、都度考える必要が出てくるため、業務効率が悪化します。

一覧性が低くなる

ペーパーレス化したデータは、特定のキーワードを検索することには長けていても、多様なデータを並べて俯瞰し検証する事には向いていません。

通常のディスプレイや、ましてスマートフォンやタブレットでは画面サイズが足らず、大きなコストを掛けて複数画面や大型ディスプレイを導入しても、紙の利便性から考えれば劣り、業務効率は悪化します。

数字を羅列する見積書や契約書等は定型作業になる事も多く、ペーパーレス化は業務効率を向上させます。
しかし、創造的・クリエイティブな作業には向いておらず、業務効率は悪化します。

たとえば、多くの関連資料に目を通して把握した上で、コンペの提案書などを作成する作業はペーパーレス化では業務効率の低下を招きます。
紙文章なら簡単に行えた、マーカーでチェックした内容を読み返して比較する、その試行錯誤の中から方向性を見いだし、再度検証しながら提案書を作り上げる作業は、同様の事を画面上で行っても、業務効率が上がる事は少ないと言えます。

一手間増える

本来は紙だけで終了していた業務も、電子化する一手間が増えて、単純に業務効率は悪化します。

また、特に不慣れなうちは、電子化されたデータを印刷してから業務に臨む事も多く、こちらも一手間増えて効率悪化に繋がっています。

集約印刷で見づらい

一枚の紙に表裏使うなら、大きな支障は出ません。
しかし、1枚のA4用紙に本来4P分の印刷をすることで、使用する紙や印刷代を大幅に削減出来ても、見づらい資料でミーティングが停滞しては本末転倒です。狭い机で仕事するよりも広々とした机で仕事する方が、効率よく進められてアイディアも出ますよね。

必要な資料も印刷しない

紙を減らす!という号令の元、必要な資料が手元に無かった事で大きなトラブルに発展する事例は後を絶ちません。有った方が効率は確実に良いのか?無くても良いのか?見極めることが大切です。

モノクロ印刷で資料が分かりづらい

カウンター料金を節約するためには、カラー印刷を止めてモノクロに絞るのは効果的です。
しかし、そこで絞れるコストと、大切な部分を見逃す事によるトラブルや、チーム内で理解が進まずに業務が停滞化する事と、都度両天秤にかける感覚が重要です。

デジタル化する手間

過去の文章を電子化するのは、大きな手間がかかる割りには現在の業務に直結しません。完成して初めて稼働しますが、それまでの期間はリソースを割くだけになります。
新規文書の電子化についても、ITリテラシーが低い方には時間を要したり、ITリテラシーの高い方でも当初は慣れる事が必要だったりと、今までの業務にプラスの手間が必要になり効率が低下する側面があります。

この記事を書いた人

名古屋在住のIT・通信・格安SIMライターです。

プリンターはDOS時代のドットプリンターから使い始めて
初期のインクジェット、モノクロレーザープリンター
カラーレーザープリンターを使ってきて
モノクロ複合機を経てカラーデジタル複合機リースに到達。

業務用テキスタイル熱転写プリンター
業務用テキスタイルインクジェットプリンター見学に
国内・海外工場に何度も足を運ぶマニアで
日夜情報収集に励んでいます。

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