失敗しないペーパーレス化の適切な進め方【準備編】

ペーパーレス化にチャレンジしても、失敗する企業が後を絶ちません。

「せっかく先行投資までしたのに・・・無駄になった」話を聞くと、躊躇する方も多くなります。

でも日本だけでなく、世界的にペーパーレス化を推進する流れは大きくなっています。
ペーパーレス化が成功すれば業務効率が大きく向上し、企業の競争力が増します。
自社内のペーパーレス化を達成しなくては、そんな企業との取引も難しくなってきます。

ペーパーレス化に成功している企業は、共通点があります。
それは、例外なく綿密で的確な導入準備を事前に行っている事です。

ペーパーレス化に失敗しない、適切な準備について説明します。

目次

現状把握

自社の現状把握を最初に行います。

現状把握と同時に、数値目標を内容ごとに定め、ペーパーレス化を進める方が、進捗状況が把握出来て、モチベーションの維持やアップに繋がります。

オフィスにおける仕事内容は、部門ごとに異なり、ペーパーレス化に向いている内容と、向いていない内容の仕訳も必要になります。
「やりやすい・やりにくい」も要素としては大切ですが、本来の向き不向きを考慮した上で、業務を進めるのに効率が良くなる事に関しては、積極的に早急に進めることで、成果が解りやすく社員の多くに伝わるモデルケースになります。

無駄をあぶり出す

漠然と羅列するだけでは無く、現状ある無駄を把握する視点を持って進めましょう。

現状の業務で使用する部署別の印刷コスト(紙代やインク代、それにまつわる時間コストや機器コストも含めて)を明確化しておくと、その後の成果もハッキリします。

ペーパーレス化のメリットに、無駄を省くことで業務の生産性向上があります。
資料の書類が山積みになっているオフィスで、多くの社員が紙の使用に無頓着な現場ほど、ペーパーレス化によって業務の改善が行えます。

紙による個人資料は、基本的に100%のデジタル化を目標にしても、問題はありません。
これは、ペーパーレス化を進める、多くの企業で実践されています。個人が溜め込んでいた資料がデジタル化されることにより、元々所有していた個人が業務の中で利用しやすくなるだけでなく、共有されることで企業の共有財産として、多くの社員が活用出来る様になります。

ペーパーレス化の理由・目的をハッキリさせる

目的を事前に明確化することで、その後の進め方が変わってきます。

「コストを削減したいのか?」「収納スペースを空けたいのか?」「横断的な使えるデータベースの構築がしたいのか?」等、ビジョンを具体化させることで、ペーパーレス化するデータの扱いが解りやすくなります。

解りやすい一例として、書類を保管するキャビネットの削減が有ります。
オフィスを占有しているキャビネットが減少すれば、余裕の有る働きやすいスペースが生まれ、ペーパーレス化の成果として、多くの社員に認識がし易い事が挙げられます。

野村総合研究所がペーパーレス化に取り組み始めた当初、本部キャビネットの70%削減を掲げました。仕事の内容にもよりますが、50%から70%のキャビネット削減を目標として掲げる事で、モチベーションが上がります。

ペーパーレス化を進める中で、業務の整理整頓も進み、効率の上昇も見込めるメリットが有ります。

ペーパーレスに向いている業務の把握

効果が出やすい業務から進めると、スムーズにペーパーレス化が進められます。

具体的に業務内容を精査して、ピックアップします。
以下は、特に向いている業務内容の特徴です。

どんどん更新する必要がある業務

デジタル化することで簡単に編集出来る事は、即座に変更が反映されるメリットが出ます。

進行状況の管理や、作業状況や内容のチェック等がリアルタイムに可能で、進捗状況が刻々と変わっていく内容が合理的に複数の利用者で共有出来て、ペーパーレス化への賛同を得る可能性が高く、向いています。

これらの業務は、基本的に100%のペーパーレス化を進める事で、業務効率は大きく改善します。

稟議書

申請や承認を求める書面は、ペーパーレス化がしやすい業務です。

それに特化したサービスも提供されていて、導入へのハードルが低く、稟議書からペーパーレス化を始める企業も多く有ります。

スピード感が増して、組織が活性化します。

東京都のペーパーレス化では、起案文書の電子決済率の目標を100%に設定しています。印鑑の廃止や電子化も含めて、特に理由が無い限り100%の目標を最初から設定する方が、ペーパーレス化は進みます。

複数人で利用する書類

業務マニュアルや共有化したいトラブル情報など、全国に拠点が多く有る企業ほど、デジタル化は有効な手段になります。

変更や情報の更新も即座に反映されて、場所や時間を選ばずに複数の人が利用できる書類は、ペーパーレス化の解りやすい大きなメリットが出ます。

取り組みやすいペーパーレス化の筆頭として、FAXのペーパーレス化があります。
東京都の目標数値としては、98%に設定されています。
これからペーパーレス化に取り組む企業でも、90%以上の目標数値を設定する必要が有ります。

同じ紙の用紙を、多くの場所にFAXをするよりも、電子化した書類をサーバーに置いて、その置き場所をメールで通知することにより、業務効率が向上する上に、通信費の節約にも繋がり、解りやすいペーパーレス化が進みます。

複数人で取り組む業務

書類の閲覧だけで無く、同時に編集できる作業も効果的です。

別部門や営業所と連携して進める業務の管理等はその典型で、管理者もタスク管理が容易になる事から、メリットが解りやすくなります。

複数人で取り組む代表的な業務として、会議があります。
会議の度に、膨大な紙が使われている企業や役所は多く、紙の消費だけで無く、印刷の手間や準備などにも多大なコストが掛かっています。

ICTによるペーパーレス会議を原則として、会議での紙媒体の資料配付は100%禁止にする目標値を設定することにより、資料の作成時点から利用する機器で見やすい内容を意識するようになり、ポイントも絞られて業務効率が大きく改善します。

印刷費用の具体的な削減と併せて、会議準備に要していた時間も短縮する事が出来、目標数値としては1/5から1/6程度にする事で、作業尾効率がアップします。

副産物として、ペーパーレス化する事により、会議終了後に紙の資料を持ち帰ることが無くなるため、置き忘れや盗難、のぞき見による情報漏洩のリスクも大きく低減する事が出来ます。

社内周知

ペーパーレス化は、文書の電子化をすればOKではありません。
実際に行う際には、明確な「ルール」を決めて運用していく必要があります。
そのルールを社内で共有していく事が、最初に取り組む課題です。

「ペーパーレス化」が何故必要なのか?「ルール」が何故存在するのか?
説明と同意が無くペーパーレス化を進めても、決して上手くいきません。

紙を無くす事が目的では無く、業務を効率化する事で、もっと大きな仕事に取り組む為のツールが「ペーパーレス化」であり、そのためには「ルール」が必要である旨を周知します。

ルールを守ってペーパーレス化を遂行するために、ITリテラシーの向上も必須です。
そのためには、社内全員で学ぶ機会が必要です。

ルール無く電子化を進めることで、ペーパーレス化には絶対に必要な「共有」が崩壊します。

ルールが有っても、ITリテラシーが足りなかったり、守られない共有ルールが混在したりすれば、探したいデータファイルに簡単には辿り着けません。
業務が停滞するだけで無く、次の業務が停滞しないように、サーバーではなく自分のパソコンに保存する・紙で出力する行為に繋がり、ペーパーレス化は崩壊します。

一方的に「ペーパーレス化するぞ!」という事を周知させても、確実に失敗します。
周知させる内容として事前にルールを決めて、ペーパーレス化が何故必要かを説き、社内セミナー等でITスキルの向上を図るまでが、ペーパーレス化の社内周知です。

ペーパーレス化の本当の意味を全員に理解して貰う目標値は、当然100%で望む必要が有ります。

コア業務のペーパーレス化から取り組む

何からペーパーレス化に取り組むか?には色々な考え方が有ります。

コア業務のペーパーレス化は、目に見える直接成果に繋がる即効性があります。
そのためにはまず、コア業務が何か?を部署別に明確にします。
コア業務のプロセス全体を見直し、業務の中に無駄が無いか?見直す中でペーパーレス化を進めていきます。

コア業務の生産性向上に、現状は妨げになっている業務をペーパーレス化によって廃止・簡素化が出来れば、組織全体の生産性が結果として大きく向上します。

コア業務になら、ペーパーレス化のための投資も、し易いと言えます。

まとめ

ペーパーレス化の準備に、特別なことは何もありません。

業務内容の見直しを同時に進められる事で、方向性も明確になります。

準備段階でスタッフのペーパーレス化への理解が深まれば、実際に進める中で強力なリーダーになります。

多くのリーダーを輩出することで、ペーパーレス化はダイナミックに進みます。準備段階から、多くのリーダー候補を育てる事を心がけてください。

この記事を書いた人

名古屋在住のIT・通信・格安SIMライターです。

プリンターはDOS時代のドットプリンターから使い始めて
初期のインクジェット、モノクロレーザープリンター
カラーレーザープリンターを使ってきて
モノクロ複合機を経てカラーデジタル複合機リースに到達。

業務用テキスタイル熱転写プリンター
業務用テキスタイルインクジェットプリンター見学に
国内・海外工場に何度も足を運ぶマニアで
日夜情報収集に励んでいます。

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