プリンターは一年を通してお世話になる機器ですが、実は季節によって故障のリスクが変化することはあまり知られていません。
冬はプリンターが最も故障しやすい季節です。暖かい時期には何の問題もなかったのが、突如として不具合が頻発し、いきなりの不調に戸惑う人もいるのではないでしょうか。朝一番で、さあ仕事!というときに、プリンターが使えない状態では支障が出ます。
今回は冬になるとプリンターが不具合を起こす原因について、解説します。
冬のプリンターの不具合の原因
春や夏には何の問題もなかったプリンターが、冬になると突然故障するケースはまま見られます。これには主に二つの原因があります。
プリンターは普段の仕事の中で、ツールとして利用するケースも多い為誤解されがちですが、多くの部品が高精度に制御されている精密機械です。
プリンターの利用には人間が過ごしやすい環境が最適です。
温度の低下
一つは、気温の変化にあります。実はプリンターはあまり寒さに強くなく、プリンターの保管温度は0度以上、35度前後以下までを基準として設計されています。
そして、使用時には10度以上の環境であることが望ましいとされています。というのも、あまりに寒いとインクが固まってしまい、印刷物がかすれてプリントアウトされてしまうことになるためです。
一般的な室温で使っている場合は問題ないかもしれませんが、冬の屋外や頻繁に氷点下に達する寒冷地などでは、こういった問題からプリンターが故障しやすい傾向にあります。
インクジェットプリンターの場合
より具体的には、インクジェットプリンターの場合、室温が15℃から25℃前後で、湿度は40%から60%が稼働環境に最適とされています。
プリンターメーカーの違いで、最適な環境は異なっています。
エプソンが推奨している環境は、室温が15℃から25℃・湿度が40%から60%です。
キャノンが推奨している環境は、室温が15℃から30℃・湿度が10%から80%です。
ブラザーが推奨している環境は、室温が20℃から33℃・湿度が20%から80%です。
ブラザーは、気温が低すぎる場合に「室温が低すぎます」の表示が出て、プリンターは稼働しません。
寒いことによって、駆動部分の油(潤滑剤)が固まって機能しなくなり、正常な機能を発揮出来る動きが出来なくなります。
また、寒さによってインクの変質が起こり、正常なカラーが表現出来ない、インクが目詰まりするといったトラブルを誘発します。
大型複合機コピー機の場合
大型複合機コピー機も繊細です。
稼働環境として最適なのは、室温が10℃~32℃・湿度が15から80%です。
インクジェットプリンターと同様に、駆動部分の油(潤滑剤)が固まって機能しなくなり、正常に稼働できなくなります。
インクジェットプリンターとは異なり、印刷に熱処理をする構造のため、比較的電源を入れて時間を置けば、多くの場合には解消に向かいます。
結露
寒い季節にプリンターが動かなくなるもう一つの原因は、結露です。
結露は冬になるとガラス戸や窓に現れる自然現象ですが、実はプリンターも結露が起こりやすい機器の一つです。
内部にはスキャナーなど、結露が起こりやすいガラス面が多用されているため、使用環境によっては結露が頻繁に発生します。
結露がプリンターで発生すると、印刷のにじみや原因不明のエラーなど、様々なトラブルを引き起こします。
結露が発生した場合の具体的な症状として、最悪の場合は電源が入らない事があります。
紙詰まりが頻発して、印刷物の定着が悪く、ボロボロと紙からトナーが離脱して、使い物にならないケースがあります。
機器に影響を及ぼしているだけでなく、用紙トレイの紙を確認すると、用紙に湿り気を感じます。
プリンターを稼働する際には、結露が起こりにくい環境を維持することが大切です。
結露した状態でプリンターを稼働させると、プリンターの内部で用紙が水分を吸ってしまう事から、紙詰まりの原因になったり、大型複合機コピー機では半分しか印刷されてこない事や、印刷されない部分が発生したり、一部が真っ黒で印刷されたりするエラーが発生します。
結露や湿気は冬場だけで無く、様々な状況で発生します。
「梅雨の時期のコピー機トラブルと対処法!故障・破損を防いで長く使おう」も、併せてご覧下さい。
対処方法
これらのトラブルを回避するためには、以下のようなポイントに気をつけながらプリンターを使用することが大切です。
窓際などの気温が下がる場所に置かない
まず、プリンターは寒暖差の影響を受けづらい場所に設置することが大切です。窓際のように、気温が下がりやすい場所は寒さによるトラブルを回避するため、できるだけ避けるようにしましょう。
窓際は夏場に気温が上がりすぎてトラブルになる事もあるため、1年を通して避けた方が良い場所です。
プリンターの設置場所はトラブルを未然に避けるだけでなく、業務効率にも大きく影響します。
「プリンター・複合機を置く場所はどこが正解?サイズごとに解説」も、是非併せてご覧ください。
暖房をつける
プリンターを最適な温度で使うためには、利用環境を整える事しかありません。
石油ストーブなどを近くに置いて、一気に暖めるのは結露を誘発するため、エアコンで空調を整えるのが最適です。通常からストーブを利用しているなら、コピー機のある部屋ではヤカンを置いて加湿することで結露を誘発するため、止めた方が賢明です。
プリンターの内部と外部の温度差が出ない様に、カバー類を解放して中と外の差を少なくすると効果的です。早く温度を上げるために、機器にドライヤーを当てることは厳禁です。プリンター内部のパーツが熱でダメージを負って、故障に繋がります。
室温を上げすぎるのも、思わぬトラブルに繋がるので注意が必要です。
冬だけで無く、夏の暑さもプリンターのトラブルを誘発します。
「夏のプリンター、コピー機、複合機のトラブルと注意点」も、併せてご覧下さい。
主電源を切らない
プリンターが冷えてしまう原因として、電源を落として熱を発生しなくなってしまう状況が長く続くことも挙げられます。
プリンターを頻繁に利用する場合は使用のたびに電源を落とさず、常につけっぱなしにしておくことで、温めながら利用できるため、寒さの被害を受けづらくなります。
冬場だけでなく、プリンターは利用しない時でも、電源は入れて置く方がトラブルを未然に防ぎ、結果的にメリットがあります。
電気代が気になる方もいらっしゃると思いますが、それほどの金額ではなく、メリットの方が大きいです。
詳細については、「プリンターを使わないときは電源をOFFにするべき?常時ONにすべき?」も、併せてご覧下さい。
暖機モードの設定
大型複合機コピー機には、暖機モードの設定が可能になっている機種があります。
暖機モードを有効にする事により、コピー機内部の重要部分を暖める機能が働いて、結露の防止に一定の効果が有ります。
電源が入っていれば、節電モードになっていても暖機モードが優先され機能します。
暖機モードの設定には、管理者モードでのログインが必要になります。
富士フィルム製の場合、システム設定 - システム時計/タイマー設定 - 暖機モード動作 の順番でタップして、暖機モードの設定を行います。
設定内容は、自動的に動作したりや、停止したり、暖機モードを行う開始時間の設定をしたり、他にも継続時間などの項目が設定出来ます。
用紙の問題
冬場の用紙の問題として、乾燥した状態から静電気が発生している場合と、逆に結露が影響することで、用紙が湿り気を帯びてしまう事が有ります。
これらの事態では、本来1枚ずつ送られる印刷用紙が、複数枚が連なってプリンターに送り込まれることにより、紙詰まりが起こります。
この事態を改善するためには、用紙を捌(さば)くことによって、用紙間に空気を送り込む事により、多くの場合は改善します。
プリンターのトラブルで多い具体的な内容と対処法については、「プリンター、複合機の印刷物のかすれ・色むら・ずれ対処法」も、是非ご覧下さい。
それでも改善しない場合は
寒さによるトラブルは、上記の対処法によって大体の場合改善するものです。ただ、室温を暖かくしても、プリンターにその熱が届くまではある程度時間がかかります。
暖房を入れてすぐプリンターを使うのではなく、しばらく放置してからプリンターを利用しましょう。
あるいは使用のタイミングの前から対処を施しておき、使用の際にトラブルが起きないよう防止する取り組みも重要です。
おわりに
冬場のプリンターは、思った通りに動作しなくなることが多いものです。正しい対処法を身につけ、プリンターを快適に活用しましょう。