ペーパーレス化を行うと、紙の資料のボリュームが減るのでオフィスの保管スペースを圧迫しない点がメリットです。データ化することにより、必要な資料を探しやすくなるため、作業効率のアップにもつながります。
このようにメリットが多いペーパーレス化ですが、もちろんデメリットもいくつかあるので、「気を付けたい点」として6つご紹介しましょう。
注意すべき点1. 完全ペーパーレス化は不可能だと認識しよう
ペーパーレス化の考え方自体は、決して最近出てきた新しいものではありません。
コンピュータが一般的に普及する前の1970年代から、既に構想として有ったと言われています。
電子機器の進歩がペーパーレス化に追いついたのは、最近の事です。
それによって21世紀になると、多くの国にペーパーレス化が導入されました。
ペーパーレス化が進んでいる国は、国家主導で取り組んだケースが多く、デンマークとエストニアの両国が、成功している国としてよく取り上げられます。
デンマークでは、2004年には国や自治体、省庁を横断する行政ポータルサイトの運用を始め、2007年には政府機関の全てで個人認証が可能になる「EasyID」運用を開始して、2011年には国民の行政へのデジタルアクセスが義務化され、文書郵送が無くなりました。多くの費用が節約出来て、その金額は優に数百億円以上に達しています。
比較すれば、日本のペーパーレス化は進んでいない事が現状です。
記憶に新しいのは、コロナ禍で行われた「特別定額給付金」のオンライン申請です。
ペーパーレス化でオンライン申請した内容を、役所で紙に印刷してチェックしている事がニュースになりました。
ペーパーレス化を完全に成し遂げるのには、現実を考えれば無理があります。
仮に自社でペーパーレス化を成し遂げても、取引先もペーパーレス化が出来ていなければ、現実の業務の中から紙を完全に排除することは出来ません。
社会全体が一丸となって、ペーパーレス化に取り組む土壌が形成されなければ、絵に描いた餅にしかなりません。
また、紙の便利さも見逃せません。書き込みが簡単に出来て、そのまま渡す方が、合理的に仕事が進む事も多く、ペーパーレス化によって非効率になるケースもあります。
大切なのは、出来る事から初めてみることです。
ただ、ペーパーレス化に取り組む事は悪い事では有りませんが、それが目的になっては本末転倒です。
注意すべき点2. ペーパーレスは手段。目的は業務効率化やコスト削減
時代はグローバル化しています。一時期、社内公用語を英語にすると表明した企業が多く有りましたが、最近あまり聞かなくなったと思いませんか?
英語はあくまで手段ですが、行き過ぎて目的になれば、業務が停滞する事を多くの企業が経験したからです。
ペーパーレス化も同じです。
確かに企業のイメージを上げる手段として用いられる場合もありますが、ペーパーレス化の本質は、書類をデジタルデータ化する事で、必要な書類をいつでも・だれでも・どこででも簡単に引き出す事を可能にして、書類の置き場所に掛かる保管経費や印刷経費を不要にする事です。
ペーパーレス化は目的では無く、業務効率をアップしてコスト削減をする、企業を発展させるための手段です。
ペーパーレス化を導入して出てくる問題の中に、それが目的になって業務効率が落ちて、業績が悪化するケースが多くあります。
やはりペーパーレス化は、無理なく出来る事から長期的な展望で、関わるスタッフ全員だけでなく、社員全体で目的意識を共有する事が必要になります。
注意すべき点3. データ化した書類の廃棄方法に気を付けよう
情報漏洩するケースは、現状紙であるケースが多くなっています。
ペーパーレス化したデータは、書類での保管が不要になることも大きなメリットですが、迂闊に書類を処理する事は大きなリスクが有ります。
まず、廃棄しても良い書類と良くない書類を仕分けする必要が有ります。
電子化して廃棄するためには、電子文書の原本性の担保が必要になるものがあります。迷ったら、破棄しないで保管する勇気も必要です。
書類の廃棄をする場合、単純にゴミ袋に入れたり廃品回収に出したりするのは論外ですが、シュレッダーにかけることが最低条件です。
しかし、シュレッダーの種類には色々有り、ストレートカットと呼ばれる縦方向のみにカットされるタイプは、復元が可能です。シュレッダーにかけられた書類を復元するコンピュータソフトも存在しています。
シュレッダーには、マイクロクロスカットという細分化された裁断を行う物もありますが、廃棄するのに安心なのは、完全に書類復元を不可能にする溶解処理をする業者に委託することです。
専用の業者が運送にあたり、厳重に高いセキュリティで管理された保管倉庫に運ばれ、溶解処理が行われた後には、機密抹消証明書が発行されます。
バインダーやクリップを取り外す手間も不要で、手間とセキュリティをコスト計算すれば、A4書類5,000枚程度で1,800円程度の金額は充分納得が出来ます。
注意すべき点4.大事なデータの消失に気を付けよう
紙の資料の場合はゴミとして捨てない限りどこにあるかわからなくなっても、保管スペースを隅から隅まで探せばどこかから必要な資料が出てきます。
しかしデータ化している場合、間違ってデータを破棄していると、バックアップをとっていなければ二度とデータは戻ってきません。
データの消去はゴミ箱に移動する、削除ボタンを押すなど比較的簡単な作業でできてしまいますから、紙資料より消失しやすいのがデメリットです。また、パソコンの不具合により、保存してあったデータが全て消失してしまう可能性もあります。
ペーパーレス化により資料等をデータ化したときは、
- 重要なデータはフォルダに入れてフォルダ名に【重要】と入れておく
- 万が一パソコンが故障したときのために必ずバックアップをとっておく
この2つの対策を行い、大事なデータを消失させないよう注意しましょう。
注意すべき点5.直接資料に書き込みができない
データ化した資料は編集や追記などはできますが、文章やイラストに印をつけてコメントを入れたりなど、直接資料へ書き込みができません。
書き込みしたい場合は資料をプリントアウトし、紙ベースにしないといけないため、結局はペーパーレス化にならないのです。これでは、わざわざデータ化するより紙のまま資料を持っていたほうが手間がかからないでしょう。
その点、紙資料はいつでも自由自在に書き込みできます。直接書き込みをしたい資料にとっては、データ化することがデメリットと言えます。そのため、資料をデータ化するときは、閲覧だけで問題ない資料のみに絞っておくと良いです。
注意すべき点6.資料のサイズが大きすぎると見づらい
ペーパーレス化のデメリットには、資料サイズが大きすぎると見づらいという点もあります。
たとえばA3サイズの資料をデータ化した場合、紙ベースであれば問題なく見られますが、データ化するとパソコンやスマホの画面で縮小されたデータ資料を見ることになるのです。
A3サイズの資料をパソコン・スマホの画面で見ると、文字は小さくなり、ピンチアップすると今度は資料の全体が見えにくくなってしまいます。
データ化しても見えやすさをキープしたいなら、A3以上の資料はデータ化しないほうが良いかもしれません。もしくは、分割可能な資料であれば、A4サイズ以下でいくつかに分割してデータ化するのも一つの方法です。
ペーパーレス化により資料の保管へ影響を与えないためには
ぺーパーレス化には他にも、パソコンに慣れていない社員にとっては資料を扱いにくいなどのデメリットがあります。
しかし、デメリットは対策次第でクリアできるので、
- データのバックアップをとっておく
- 書き込み不要な資料をメインにデータ化する
- サイズ大きすぎる資料はデータ化しない
- データ化された資料の保存・閲覧方法のマニュアルを用意しておく
などの対策を実施しておきましょう。
まとめ
ペーパーレス化を行うと、必要な資料が探しやすくなる、資料の保管スペースが少なくて済むなどのメリットがありますが、気をつけるべき点もあります。いずれも対処法はありますから、あらかじめ対策しておき、ペーパーレス化と上手に付き合っていきましょう。データの消失に関しては今後の業務に大きな影響を与えますので、消失させないための対策には力を入れてください。