テクノロジーの進化は、「より速く・より便利に」が基本にあります。
1960年の国鉄特急「こだま」は東京大阪間を6時間半で結んでいましたが、1964年の東海道新幹線の開通で4時間になりました。今後開通が待たれるリニアでは、同じ区間を67分で結ぶ計画です。
プリンターの基本性能は、概ね速度で決まります。
1分間に20枚の出力が出来るプリンターでは、1,000枚を出力するのに50分を要しますが、1分間に50枚の出力が出来るプリンターでは、20分で作業が完了します。
印刷結果が同じなら、掛かる時間は少ない方が良いのは、鉄道と同じ。
ただ、鉄道なら鈍行の良さもありますが、印刷作業中は別段の楽しみもありません。
考えたいのはバランスです。
車で長距離の移動が頻繁にあり快適に移動するなら、高額なGTカーは大きな価値があります。
しかし、近所に買い物に行くだけなら、軽自動車でも不都合は無く、購入維持費も安価です。
プリンターの印刷速度は速いほうが良いのか、解説します。
もちろん速い方が良いが…高額になりがち
プリントボタンやコピーボタンを押したら、必要な量が間髪入れずにプリントアウトされれば、快適なのに間違いありません。
しかし、その快適な環境に支払えるコストが適正か?を考える必要があります。
プリンターは連続印刷速度で、価格が大きく変わってきます。
たとえば、同じRICOH(リコー)のデジタルフルカラー複合機の中で比較すれば、
・RICOH IM C2500 カラー25枚/分 モノクロ25枚/分 1,177,000円
・RICOH IM C6000 カラー60枚/分 モノクロ60枚/分 2,684,000円
と、連続印刷の速度の違いで、150万円以上の差が出ます。
月に1万枚以上をコンスタントに印刷する現場では、毎分60枚の印刷能力は仕事の効率を大きく上げる効果が有り、費用対効果を考えても導入を検討する余地がありますが、多くのオフィスでは月に3,000枚以下の印刷です。
このレベルでは大きな仕事の効率改善は望めずに、費用対効果を考えれば適正とは言えません。
印刷速度が速い=高スペックではない
印刷速度が速ければ、ハイグレードで本体価格は高額になります。
この価値観と商品構成は以前からありましたが、現在のトレンドは変わっています。
以前の自動車の世界では、同じ車種でも最も安い「素のグレード」は時計も付いていない簡略装備で、高い「高級グレード」になればマッサージ器まで埋め込まれている、お大尽仕様が存在していました。
しかし、現在は最も安いグレードでも、一通りの安全装備まで備えているケースが多くなっています。
前述のRICOH(リコー)のデジタルフルカラー複合機では、安価なRICOH IM C2500も、高額なRICOH IM C6000も付いているスペック(機能)は、殆ど同じです。高額な機種でもお大尽仕様にはなりません。
印刷速度の違いだけで、どちらもユーザーが必要な機能は、別途オプションで装着するスタイルになっています。
主な機能を、具体的に見てみましょう。
FAX機能
たとえば、前述の価格にはFAXの機能は、標準ではどちらもありません。
どちらもFAXユニットタイプを装着する必要が有り、標準価格はどちらも150,000円です。
FAXの送受信を微細な400dpiで行う為の、ファクスのSAFメモリー60MBも、どちらの機種にも備わっておらず、80,000円のオプションになっています。
無線LAN機能
有線LANを接続するLANポートは、どちらも標準装備になっていますが、無線でWi-Fi接続する無線LANの機能はどちらもオプションになっています。
拡張無線LAN ボード タイプのオプション価格は、どちらも50,000円です。
ADF機能
原稿を自動的に送り込むフィーダー装置も、標準では搭載されていないオプションに、両機ともなっています。
120枚が積載できるタイプで、どちらもオプション料金は210,000円です。
OCR機能
スキャナーで文字を読み取って、デジタル化(PDFを生成)する機能も、どちらの機種もオプションになっています。
OCR 変換モジュール タイプのオプション価格は、どちらも50,000円になっています。
個人認証機能
セキュリティ強化とコスト管理に多く導入されている、ICカードとカードリーダーも、どちらの機種もオプションになっています。
ユーザーカード・管理者カード(ICカード)を発行する際に必要となる、パソコンに接続するICカードリーダー/ライターが、どちらも48,000円のオプション価格になっていて、ユーザーICカードと管理者ICカードの10枚セットが15,000円です。
高額機種でも全部入りにはなっていない
具体的な機能を検証しても、高額機種にはオプション代の機能が加わっているのではなく、連続印刷速度以外には大きな差が無い事が解ります。
安価な低速機でもフルオプションにすれば、上位機種の価格を簡単に超えてしまいます。
必要なのは、自社に適正な連続印刷複写速度を見極めて、必要なオプションを厳選して装着する事です。
おススメは連続複写速度が分速20枚機~分速35枚機
予算に糸目を付けない買い物も素敵ですが、やはり何事もバランスが大切です。
その目安になるのは、1ヵ月の印刷総枚数を把握する事が指針になります。
印刷枚数と印刷速度
枚数による適正な速度は以下の通りです。
・3,000枚まで 20枚/1分間~25枚/1分間 程度
・5,000枚まで 25枚/1分間~35枚/1分間 程度
・10,000枚まで 35枚/1分間~45枚/1分間 程度
・1万枚以上 45枚/1分間~60枚/1分間 程度
印刷枚数と印刷速度については、別項の「印刷枚数から見る、複合機の最適な速度はどれぐらい?」も併せてご覧下さい。
現在コスパが良い印刷速度機は?
メーカー各社が力を入れるのは、その時ニーズの高いクラスです。
液晶テレビの購入を考えた時、当初は32インチが最も各社力を入れた激戦区で、費用対効果が優れていました。
現在は大きなサイズのニーズが増えて、40インチから50インチが費用対効果の高い、お買い得な商品が増えています。
多くのオフィスで印刷する月間の枚数は、概ね3,000枚以下が大半です。
そんな事業所には、ワンクラス上げた5,000枚クラスの能力なら、快適に仕事の効率改善を行いながら、メーカーも力が入っている事から費用対効果も望むことが出来ます。
オススメするのは、予算に応じて20枚/1分間~35枚/1分間の機種です。
ワンランク上の方が、結果的に安くなる事も?
ワンランク上の機種を選べば、必然的に機種の本体価格は上がり、月々支払うリース料も高くなります。
しかし、長期的なスパンで考えれば、この方が安くなるケースがあります。
印刷速度が速い機種は耐用印刷枚数が多い
印刷速度が異なる機種では、寿命にあたる耐用枚数も異なっています。
印刷速度が速い機種では、印刷枚数が多い前提で設計がされていて、基準になる耐用年数の5年の間に、大量の印刷枚数がこなせる様になっています。
ワンランク上の機種を選ぶ事で、メーカーが想定している利用年数を、余力をもって快適に利用することが可能になります。
詳細については、「プリンターの耐久枚数と月間印刷枚数からみるプリンターの寿命」も、併せてご覧下さい。
再リースも快適に利用出来る
印刷速度と枚数が適正な場合、法定耐用年数の5年に併せてリースを組んでいる場合、リースが終了する期間と機器の寿命を迎える時期も、利用手段や置かれている環境などにも左右されますが、多くの場合で一致します。
ワンランク上の機種を選んでおけば、当初のリース期間が終了しても充分に機器に余力が残されていて、再リースや再々リースをしても快適に利用出来る事が多くなります。
年間一括払いをする再リースや再々リースは、概ね年間のリース料が当初のリース月額料金と同額になり、支払リース料は一気に12分の1になり、毎月掛かる印刷経費はカウンター料金だけを支払えば良くなります。
契約終了後に新たなリースを導入するよりも、大幅に印刷経費は安くなります。