ドットプリンターとは?メリットとデメリット、普通のプリンターとの違いは?

ドットプリンターという種類のプリンターがあるのをご存じですか?

一般的に馴染みは薄いですが、必要な現場では「これが無くては仕事にならない!」と言われるくらい、インクジェットプリンターやレーザープリンターに置き換える事が出来ない、大きな特徴があります。

今回は、ドットプリンターを解説します。

目次

ドットプリンターとは

ドットプリンターの歴史は古く、1970年代には登場していて1990年代に入りパソコンOSにDOSが中心だった頃までは、パソコン用のプリンターといえば、ドットプリンターでした。

ドットプリンターの正式名称は、ドットインパクトプリンターと言います。
点を打ち付けて連続させることで文字を表現します。
打ち付けるピンと印字される紙の間に、インクを含んだインクリボンが入り込むことで、打ち付けたピンの圧力が紙にインクをつける構造になっています。

日本では馴染みが薄いですが、パソコンやワープロが普及する前までは、文字印字にタイプライターが用いられていました。タイプキーを押すと、ハンマー状になっている金属製の文字が紙に叩きつけられるタイミングでインクリボンがせり出してきて、紙との間に立ち塞がり、インクが文字の形をそのまま紙に乗せる構造です。
金属製の文字では無く、タイプライターと同じ構造の考え方で点を打ち、点の集合として文字を表現するのがドットプリンターです。

ドットプリンターは紙に印字する時に物理的に圧力が掛かるため、複写式の伝票や用紙を使うと、ボールペンで書いた時と同じように、文字が複写できる事が最大の特徴です。
冒頭に述べたドットプリンターが必要な現場は、複写式の書類を日常的に扱うところです。

ドットプリンターの種類

ドットプリンターは、用途によって主に3種類があります。

ラウンド型

ドットプリンターは大きなサイズになりますが、このタイプはサイズがコンパクトで、比較的安価です。
インクジェットプリンターが一般家庭に普及する以前のプリンターでは、最も導入がしやすく、筆者もwindowsが普及する前のDOS機パソコンで利用していました。

大量印刷や、多くの複写枚数が必要な時には向いていません。
用紙を曲げて印刷する必要が有り、細かい印字の正確さが求められる場合は、対応が難しいタイプです。

主に、フロント業務に用いられる事が多いドットプリンターです。

水平型

ラウンド型に比べると、筐体が大きく価格も高価になりますが、ドットプリンターが必要とされるオフィスでは、最も多く導入されています。

複写能力が高く、多くの複写枚数が必要な用紙にも対応出来ます。
真っ直ぐに用紙を引き込んで印刷するタイプのため、用紙が曲がりにくいだけでなく、安定している事から細かく正確さが求められる印刷ニーズにも応えます。

主に、物流の伝票発行業務等、大量に印刷する現場で利用されています。

ライン型

最も大きなサイズになり、最も高額になります。
ドットプリンターは比較的高価ですが、ラウンド型なら5万円程度から購入出来ます。
しかし、NECが2020年に発売したライン型ドットプリンター「MultiImpact 750/500E PR-D750/500E」の販売価格は、200万円を超えています。

その分、非常に高性能です。
連続帳票を高速印刷できる性能は圧倒的で、しかも静寂性にも優れています。
前述のNEC製品の場合、最大8枚綴りに対応する能力を持ちながら、漢字最高660行/分の高速印刷を実現しています。

大勢の社員が居る企業の給与明細印刷や、大量の請求書などを発行する現場で活躍しています。

レーザープリンター、インクジェットプリンターとの違い

ドットプリンターは、点を組み合わせて表現する事しか出来ないため、濃淡の表現が打ち付けた点の「多い・少ない」しか出来ないため苦手です。プリンターの選択肢がそれしか無い時代には色々と試行錯誤がありましたが、現実的には無理がありました。
インクジェットプリンターの登場が、フルカラーで繊細な表現を武器にマーケットを席巻して取って代わり、ドットプリンターは1990年代半ば頃になると一般プリント用途から姿を消します。

その後もレーザープリンターが一般的になって、インクジェットプリンターと人気を二分するようになっても、ドットプリンターが生き残ったのには理由があります。
レザーやインクジェット方式では、紙の表面に印字圧力を掛けること無くインクやトナーを乗せる印刷方式の為に、複写式の書類に対しては複写が出来ません。
この分野ではドットプリンターの独壇場になっているからです。

通常のビジネス書類や一般家庭では使われないドットプリンターですが、印刷されたものを見る機会は意外とあります。
受領証や見積書、納品書や請求書など複写式の事務書類は多種に渡りあります。

ドットプリンターの用途

ドットプリンターの用途は様々ですが、解りやすく使用する用紙から一覧にしてみます。

送り状

増え続ける通信販売を支える物流で、要になっているのは宅配便の送り状です。
伝票は、発送人控え・取扱店控え・配送業者控え・荷受人控え・受領証・荷札等の、多くの枚数が必要な複写式になっていて、ドットプリンターの利用が便利です。

手書きに比較して、大幅に時間の短縮が可能になり、大量発行を短時間で行う事が出来て、記入間違いも起こりません。

産廃マニフェスト伝票

平成10年に施行されたマニフェスト制度により、産業廃棄物に適応されるようになった産業廃棄物管理表(産業マニフェスト伝票)も複写式になっていて、ドットプリンターが欠かせなくなっています。

手書きによる書き間違えを防止して、大量発行が可能になり、業務効率が大幅に上昇します。

データベース機能がある産廃マニフェスト用システムと組み合わせて、保存している排出事業者や排出事業者ごとの産廃種類・運搬業者名称・処分業者名称等を、マニフェスト伝票に直接印字出来ます。

販売管理伝票

見積書・納品伝票・請求書等は、先方に渡す以外にも、営業部門や管理部門等の多くの現場で共有しストックする必要が有り、複写式の伝票を使う事により業務効率が上がります。

従来使用していた手書きのイメージを尊重して、ワークフローを替える事無く印刷するのには、ドットプリンターが活躍しています。

通帳

送り状と並んで、普段の生活の中で目にするドットプリンターの印字が、金融機関で利用する預金通帳等の通帳類です。

薄い紙の冊子に印字が出来て、改竄しにくい特性はドットプリンターが向いています。

抵当権設定契約証書

一般の方には殆どお目に掛かる機会はありませんが、司法書士事務所では導入する事務所が多くなっています。

複写式になっているため、手書きでも記入が可能ですが、抵当権設定登記の受託が増えると、ドットプリンターを導入した方が、業務効率が著しく上がります。

設定証書に誤字脱字があった場合、設定者の実印で改正する必要が有り、簡単に改正出来ません。書き損じは仕事が滞留することに繋がり、それを避ける為にデジタルデータをそのまま印字出来る事が有益です。

メリット、デメリット

ドットプリンターのメリットとデメリットについて見てみます。

ドットプリンターのメリット

複写式の印字に対応している

複写式の伝票書類などは、本来なら筆圧を込めて書く必要がありますが、日常的に大量に書く事は現実的では無く、ドットプリンターが業務効率を大幅に上げます。

信用がおける

手書きよりも見た目に信頼が出来る感じがあるだけでなく、実際に文字の改竄(かいざん)が難しいために信用がおける書面になります。ちゃんとした会社感が出ますね。

連続用紙に対応している

伝票などの印字には、1枚1枚バラになっているよりも、連続した用紙になっている方が効率的です。プリント後にミシン目で切り離して使います。
用紙をバラバラに束ねて重ねる事が基本のインクジェットプリンターやレーザープリンターと違う点です。

ランニングコストが安い

インクリボンは使う度に左右に動いて、繰り返し使用可能です。
頻繁に交換の必要が無く維持費が安いです。

故障率が低く長期に渡って使用出来る

比較的シンプルな構造になっているため、故障する頻度が少なく安心して使えます。
また、長期的に使用する事が出来るため、長い目で見れば高価な価格でもコストパフォーマンスは悪くありません。

ドットプリンターのデメリット

作動時の音

物理的にピンを打ち付ける構造になっていることから、作動音が大きくなります。
静音設計のものもありますが、インクジェットプリンターやレーザープリンターと比べるのは酷です。

使い道が限定される

複写式の文字印刷という用途に、基本的には限定されます。
ドットの集合体で表現する事しか出来ないため、インクジェットプリンターやレーザープリンターと比べると文字は粗くなる上に、繊細な表現等は一切出来ないため、写真や画像を扱う事は出来ません。

高価

使う用途が限定されるのに、インクジェットプリンターやレーザープリンターよりも比較的高価です。生産台数が圧倒的に少ないため、今後の価格破壊も期待出来ません。

この記事を書いた人

名古屋在住のIT・通信・格安SIMライターです。

プリンターはDOS時代のドットプリンターから使い始めて
初期のインクジェット、モノクロレーザープリンター
カラーレーザープリンターを使ってきて
モノクロ複合機を経てカラーデジタル複合機リースに到達。

業務用テキスタイル熱転写プリンター
業務用テキスタイルインクジェットプリンター見学に
国内・海外工場に何度も足を運ぶマニアで
日夜情報収集に励んでいます。

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