ペーパーレス化に失敗する企業の特徴とは

ペーパーレス化は、文字通り直訳すれば「紙を無くす事」ですが、紙を減らすという意味に捉えても、間違っていません。

深刻化している環境問題への対策や、求められる働き方改革への対応としてペーパーレス化の推進を行う企業が増えています。

しかし、ペーパーレス化に舵を切っても、やりきる企業以上に、失敗する企業が多くなっています。

ペーパーレス化に失敗する、企業の特徴を解説します。

目次

設備投資ができていない

ペーパーレス化をするためには、設備投資が必要不可欠です。

ペーパーレス化したデータを、保存するためのサーバー・通信をするために必要な回線・またはそれらを含んだサービス等のインフラが必要です。

また、これらの初期投資だけでなく、データを運用利用するために、それに繋ぐパソコンやタブレット・書類の電子化に必要なスキャナー等の機器も必要になります。

導入システムにコスト意識は大切ですが、業務内容とのバランスが大切

ペーパーレス化の目的の一つに、ランニングコストが抑えられる経費の低減があります。
会社としては経費を減らすためにシステムを導入したのにも関わらず、ペーパーレス化に必要なシステムのコストがバランスを欠いた高額になれば、「紙媒体の利用を継続した方が、運用コストは遙かに安いじゃないか!」という声が出かねません。

システムに掛かる費用が高額になり、ペーパーレス化に失敗する企業の特徴としては、現在自社で行っている仕事の手順などに、システム側を全て合わせようとする事が挙げられます。

ある意味で、ゼロからシステムを構築することになれば、その費用は高額になることが避けられません。
既に出来上がっている汎用のシステムに、ある程度は業務を合わせる割り切りをする事で、システム費用は大幅に削減出来ます。

逆に、システムに費用を掛けないことで、ペーパーレス化に失敗する企業の特徴としては、現実の業務を考慮せずに、汎用のシステムに殆ど手を付けないで、そのまま導入する事が挙げられます。

実際に仕事を進める現場で、実情とは大きく離れた使い勝手の悪さを放置して導入されても、混乱して業務効率が大きく低下するか、ペーパーレス化に背を向けて、従来の紙資料での運用継続に、頑なになる社員が続出します。

どれほど安く導入出来ても、使われなければ意味をなしません。
現場の手順や実情を把握した上で、汎用システムに合わせられる部分は、業務内容や手順の再考を含めて擦り合わせ、譲れないノウハウの部分等は、コストが掛かってもシステムに反映させていく、バランス感覚が必要です。

導入する機材にもコスト意識は大切ですが、実情も考慮する

電子化された資料をパソコンやタブレットで閲覧する場合、導入コストの安い解像度の低いディスプレイ(表示する範囲が狭い)では、読みにくいと感じる利用者が多くなり、ペーパーレス化の推進を阻害する要素になります。

日常的に使ってきた紙に変わる機材として、資料の文字が読みにくい・見えづらいのは致命的で、ペーパーレス化に失敗する原因になります。
読みにくさは業務効率の低下に繋がり、ストレスの原因になることで、紙で内容を確認した方が楽だし、効率も上がるという判断を招きかねません。

特に発言力のあるトップ層は、年齢的に高い事も多く、見えづらい機器では積極的にペーパーレス化への賛同を得られず、全社的なモチベーションが上がらずに、ペーパーレス化に失敗する原因の一つになります。

適材適所は必要ですが、大型のモニターを用意する・複数のモニターを準備する・解像度の高い機材を使用するなどの工夫が、仕事内容を加味した上でコストと照らし合わせて導入する必要が有ります。

安価な機材の傾向として、起動に時間が掛かる事が共通しています。
利用する時に多くの時間が要する機材では、紙媒体を利用した方が早い!という判断をされるため、ペーパーレス化に失敗する原因になります。
基本的には紙の資料に親和性を持っている現状を変えるために、適切なコストは掛ける必要が有ります。

他に掛かるペーパーレス化のための設備投資

さらに、システムのセキュリティ対策やランニングコスト等、継続的な管理体制の費用も必要になります。

導入したシステムを、適切に扱うための学習トレーニング・知識も必要になり、これにも時間とコストが掛かります。

ペーパーレス化は、適切なインフラ投資無しに、掛け声だけでは絶対に実現しません。

腰の引けた状態で、中途半端にペーパーレス化の導入をしても、結果的に定着しなければ、無駄な投資になります。

一旦ペーパーレス化を決めたら、適正な投資に加えて、やり抜く決意が必要です。

しかしこれは、全社を一気にやる、大型の設備投資を推奨するのではありません。

むしろそれは、お勧めしません。

小規模でも出来るところから、小さな範囲の中で次のステップを見据えながら、徐々に大きなシステムに変えていく事が合理的です。

ペーパーレス化に失敗する企業の特徴として、トップや経営陣の理解不足から来る、「経営リソースの投入内容・方法が、間違っている」「設備投資が出来ていない」事があげられます。

人の問題と紙の問題が混同されがち

企業内の資料をペーパーレス化することは、それを使う人に最低限のITスキルが必要になります。このITリテラシーが不足していれば、ペーパーレス化の推進は困難です。

ある企業の失敗例

とある企業のペーパーレス化の失敗例があります。

この会社では、業務マニュアルや、社内会議に使う膨大な紙媒体資料のペーパーレス化に取り組み、印刷費用や紙の消費の大幅な削減に、比較的短期間で成功しました。

しかし、会社の書庫に保管される紙資料を大幅に削減したのにも関わらず、全社で消費される紙は減っていない事が判明しました。

事情を調査していく中で見えてきたのは、社員のペーパーレス化に対する意識が希薄で、積極的に取り組んでいない実態です。資料としてはデータ化されていても、利用する社員が、使う都度に資料を紙に印刷していたのです。

一見するとペーパーレス化が成功しているように見えても、本来のペーパーレス化は全く進んで無い現実があり、実際には使う人の問題でペーパーレス化は失敗しています。

難しい人と紙の問題

使う人のITリテラシー不足に原因がある、使い勝手の悪さが、データ化された紙の問題と混同される事は、ペーパーレス化の推進にとって大きな障害になります。

また、トップを含む経営層にITリテラシーが不足している場合、ペーパーレス化することで情報のセキュリティ対策・利用の仕方に懸念を生み、推進を阻害する勢力になります。

ペーパーレス化に失敗する企業の特徴として、「人の問題と紙の問題が混同される」ケースが多く有ります。

業務と連動できていない

業務プロセス全般が紙に依存していない事で、いつ何処からでも必要な業務をこなす事が可能になる事が、ペーパーレス化による大きなメリットです。

これは、厚生労働省が推進する「働き方改革」にも合致します。

しかし、あらゆる分野で旧来の商習慣が多くある事も事実で、業務の中には紙や印鑑が必要な物が存在していて、承認や決済等の処理は、権限者のいる物理的な時間や場所に依存しています。

組織や企業間を跨いだ業務においては、紙による郵送やFAXを利用する事も多く、そのままの状態ではペーパーレス化は進みません。

これらを打開する方向で、国も民間企業も動いています。
たとえば、ペーパーレス化が業務と連動出来ない理由の一つとして印鑑があります。

2020年10月16日に河野太郎規制改革大臣は記者会見で、行政手続きの押印を99%廃止する事を述べました。

しかしこれは、印鑑の全廃ということではありません。

認印と呼ばれる、印鑑登録を行っていない判子の事であり、法的な証明力に乏しいと考えられる事のみです。

従来からあった認印が担っていた、書面内容への合意や認証という意思表示を、別の手段で代替する方法として出てきたのが電子印鑑です。

電子印鑑は、いつ・どこで・だれが・どのように押印したのか?という情報を、客観的に記録証明出来るものです。

書面・押印・対面の原則を見直す動きが広がってきていますが、まだ道半ばにある現実があります。

ペーパーレス化は、社内外にある長年に渡り根付いている、形式的な無駄を見極めて削減する方法である事を、社内だけで無く取引先にも理解を得る必要があります。

ペーパーレス化に失敗する企業の特徴として、既成概念から「業務の実情に合わず連動出来ない」と短絡的に諦めるケースや、「取引先に同意を得られない」ケースが有ります。

まとめ

ペーパーレス化の成功には、失敗する企業の特徴を把握して自社に置き換え、一つずつ解決していくことが早道です。

この記事を書いた人

名古屋在住のIT・通信・格安SIMライターです。

プリンターはDOS時代のドットプリンターから使い始めて
初期のインクジェット、モノクロレーザープリンター
カラーレーザープリンターを使ってきて
モノクロ複合機を経てカラーデジタル複合機リースに到達。

業務用テキスタイル熱転写プリンター
業務用テキスタイルインクジェットプリンター見学に
国内・海外工場に何度も足を運ぶマニアで
日夜情報収集に励んでいます。

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