プリンターの生い立ちは、パソコンのデジタルデータを印刷するところからスタートして、パソコンの発展と共に進化を続けてきました。
接続に使うケーブルも時代と共に進化を遂げて、現在メインの接続ケーブルとしては、汎用性の高いUSBケーブルでの接続になっています。
パソコンとプリンターを、一対で利用する事が当たり前だった時代を経て、複数台のパソコンでプリンターを共有する必要性が増えて、利用する端末もタブレットやスマートフォンなど多様化する中で、それらのニーズに応える接続方法が、無線を使ってプリンターとの接続を行う方法です。
無線を使った接続方法として、端末とプリンターを直接繋ぐWi-Fiダイレクトと、ネットワークのアクセスポイントに接続して繋ぐ方法があります。
便利で簡単に複数の端末から利用出来る、プリンターの無線接続方法の、Wi-Fiダイレクト・アクセスポイント接続について解説します。
無線LANとWi-Fiの歴史と基本
プリンターの接続に利用するWi-Fiですが、「Wi-Fi=インターネット」と認識している方も多く、インターネットへの接続手段でプリンターの接続をする事は、ちょっと疑問が沸きますよね?その疑問から解説していきます。
Wi-Fiの歴史
Wi-Fiを知るには、まずLAN(ローカルエリアネットワーク)について簡単にご説明します。
LANは特定の範囲内で、電子機器同士を相互利用接続するものです。
元々は有線接続のLANケーブルを利用していたのが、後に利便性から無線LANが登場したと考えがちですが、実は無線LANの方が登場は早く、、1970年にハワイ大学で行われた、島を跨いで存在するキャンパス間を結んだALOHAnet ( ALOHA)がその原点です。
しかし、民間の利用する機器として無線LANは高額であり、機能としても物足りなかったことから、長い紆余曲折を経た後の1991年に、初の無線LAN機器「WaveLAN」がアメリカで販売が開始されました。
共通規格の誕生
世界中の企業が無線LANへ本格的な取り組みが始まりましたが、各社がバラバラに商品開発を行っていては、別企業の商品同士は接続出来ず、普及が進まなければ大量生産が出来ず、販売価格を下げることが出来ない上に、そんな不便な商品は誰も欲しがりません。
その解決策として、無線LANの統一規格「IEEE802.11」が登場します。
この記述を見たことがある方も多いと思いますが、これは、アメリカ電子学会IEEE(アイ・トリプル・イー、Institute of Electrical and Electronics Engineers)と、無線LANの標準化を目的に設立された団体802委員会に由来しています。
Wi-Fiは無線LANの規格
この様に定められた、無線LANの統一規格として誕生したのがWi-Fiで、この規格の機器同士は、メーカーや国が異なっても、無線LANで接続出来る様になっています。
Wi-Fiは無線LANの一つの規格の商標であり、現在Wi-Fiの商標は業界団体「Wi-Fi Alliance」が保有しています。
Wi-Fiで接続した機器の先に、インターネットへの接続環境が有るか、インターネットに繋がっているネットワークに接続した時に、初めてWi-Fi=インターネットの構図が成り立ちます。
プリンターの無線接続による利便性
端末とプリンターを無線接続する方法には、Wi-Fiを利用する方法とBluetoothを利用する方法があります。
Bluetoothは通信スピードが遅く、繋がる範囲も狭い事もあり、バッテリーの消費が少ない事はメリットですが、コンセントに接続されているプリンターの利用では、あまりメリットがありません。
無線LANであるWi-Fiを使って、プリンターを接続した場合のメリットを考えてみましょう。
置き場所が自由になる
コンピューターとプリンターをケーブルで接続する場合、ケーブルの届く範囲にプリンターを配置する必要があるため置き場所が制限されます。
Wi-Fi経由でワイヤレス接続する場合は、プリンターの場所を自由に変更できます。
普段使わないときはプリンターを隠しておくこともできれば、インテリアとしてスマートな部屋を演出することも可能です。
複数のPCとらくにつなぐことができる
一般的な家庭では1台のプリンターを家族で共有のプリンターとして使うことが多いです。
有線接続のプリンターの場合は、PCとケーブルで接続する必要があるため、印刷したいPCが変わる毎にケーブルを再接続する必要があります。
無線LAN接続ではケーブルでつなぐ必要がないため、一度に複数のPCやスマホとらくに接続できるようになります。
家中どこからでも使える
Wi-Fiのエリア内であれば、家のどこからでもプリンターを使用できます。
たとえば、別の部屋にプリンターを置いていたとしても、プリンターやPCを同じ部屋に異動させて印刷する必要はありません。
どの部屋にいてもスマートに印刷ができるようになります。
スマートフォンやタブレットからでも簡単に印刷できます。
ケーブルでスマートフォンとプリンターを繋ぐには少し複雑な手順が必要になります。
しかし、無線LAN接続であれば、ケーブルを使わずにWi-Fi経由でスマートフォンやタブレットにプリンターを接続することができ、かんたんに印刷ができるようになります。
Wi-Fiダイレクトでの接続方法
端末とプリンターをWi-Fiで接続する方法として、プリンターと端末を直接繋ぐ「Wi-Fiダイレクト」から、具体的に接続方法を見ていきましょう。
Wi-Fiを使ってプリンターと直接接続する方法は、以前はアドホックモードと呼ばれていましたが、少々設定が難しいことも有って、それほど普及していませんでした。
Wi-Fiダイレクトはアドホックモードを使いやすく改良したもので、一気に簡単になりました。
基本的な設定方法
- プリンターのWi-FiをONにする
- プリンターのSSIDとパスワードをメモ
- PCやスマホからSSIDとパスワードを入力
基本的にはこの3手順だけです。
細かな手順は機種によって違いますが、簡単ですよね。
今までワイヤレスプリンターを持ったことのない人でもかんたんに印刷ができるようになります。
Wi-Fiダイレクトを利用する為には、プリンターが対応している必要が有ります。
無線LANを介すること無く、機器同士を直接接続出来る利便性がメリットですが、インターネット接続には対応出来ません。
また、端末機器のWi-Fiはプリンターに繋げる必要が有るため、インターネットは同時に利用する事が出来ません。
この接続方法は、あくまで写真データ等をやり取りするだけの接続方法です。
より詳しいWi-Fiダイレクトについては、「プリンターのWi-Fiダイレクトとはどんな接続方法?仕組みやBluetoothとの違いを解説します!」も、併せてご覧下さい。
アクセスポイントでの接続
アクセスポイントでのプリンター接続は、LAN環境が整っている場合なら、簡単に利用する事が出来ます。
パソコンやタブレットと同様に、アクセスポイント(Wi-Fiルーター)にWi-Fi接続する事で、ネットワークにプリンターを組み込む事が出来て、同じアクセスポイントに接続している(有線LAN接続のパソコンも当然含みます)機器から、プリンターにデータを送って印刷する事が可能になります。
具体的な接続方法を簡単にご説明します。
- 無線ルータを設置
- 無線ルータの設定
- PCと無線ルータを接続
- プリンターと無線ルータを接続
- PCでプリンターの接続設定
この接続方法では、Wi-Fiルーターの先にインターネット接続があるため、プリンターもインターネットに接続する事が可能になります。
プリンターの機種にも依りますが、最近のプリンターはインターネット接続前提で設計されている機種も増えています。
クラウドにあるデータをプリンターだけで簡単に印刷が出来たり、メーカーが提供する年賀状などのフォーマットがダウンロード出来たり、インターネット接続によって、プリンターの利便性が大きく広がります。